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ラース・フォン・トリアーが描くシリアルキラーを犯罪心理学者と映画ライターが分析

犯罪心理学者の桐生正幸(左)と映画ライター・村山章(右)
犯罪心理学者の桐生正幸(左)と映画ライター・村山章(右)

 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『アンチクライスト』などのデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督の新作『ハウス・ジャック・ビルト』(6月14日公開)のトークイベントが10日、都内で開催され、犯罪心理学者の桐生正幸(東洋大学教授・博士)と映画ライターの村山章が登壇。マット・ディロン演じるシリアルキラーのキャラクターや、監督が残酷描写を交えて描こうとしたものについて議論を交わした。

【写真】『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真

 本作は、1970年代のアメリカ・ワシントン州が舞台。ハンサムな独身技師ジャック(マット・ディロン)が、ある出来事をきっかけにシリアルキラーとなり“ジャックの家”を建てるまでの12年間を、5つのエピソードから描き出す。日本ではR18+指定作品としてノーカットで上映される。

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ハウス・ジャック・ビルト
『ハウス・ジャック・ビルト』より (C)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31,ZENTROPA SWEDEN,SLOT MACHINE,ZENTROPA FRANCE,ZENTROPA KOLN

 村山は、ジャックが車に乗せた女性を殺害したことについて「怖いなって思うのは、あの女性に対してイライラする感じがすごくわかるんですよ。ジャックが殺意を抱いてしまうまでのプロセスは、実は日常でも起こりうる身近なものじゃないですか」と発言。「でも我々は一線を越えない側で、現実世界で生きている」としたうえで「ただ、これはフィクションだという安心感のおかげもあるんですが、(一線を)越える瞬間の気持ちが、自分もわかった気になってしまう。それって恐ろしい映画ですよね」と続ける。

 一方、トリアー監督の作品を初めて鑑賞したという桐生は、ジャックが現場に証拠を残しすぎていること、本来は優秀なアメリカの警察の捜査が杜撰に描かれていることを指摘したうえで、残酷描写が写実的なことに言及。「本当にシリアルキラーを描きたかったら、これだけ綿密に描写できる監督ですから、きちんとできるはずなんですよね。でもそれを多分、目的にしていなかったんじゃないか」と意図を分析する。

 続けて桐生は「遠目に離れて見ている感覚が、やっぱり映画から伝わってくる。監督もまさに遠目で見ながら、何か別のものを描きたかった(のではないか)」と考えを述べながら「何を描きたかったかっていうのは、寧ろお聞きしたいくらい」と作品のテーマに思いを巡らせていた。(岸豊)

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