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新しい手法に挑んだ短編集『ちいさな英雄』が3監督とともにフランス初上映

映画祭のアーティスティック・ディレクターのマルセル・ジャンのMCでアフタートークが行われた。
映画祭のアーティスティック・ディレクターのマルセル・ジャンのMCでアフタートークが行われた。 - (撮影:中山治美)

 フランスで開催された第43回アヌシー国際アニメーション映画祭で、ポノック短編劇場『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』がフランス初上映された。舞台挨拶で西村義明プロデューサーは「この短編集にはもう一人参加する予定でした。高畑勲監督です。彼は(2018年4月に)亡くなってしまいましたが、アヌシーをとても愛していました。ここで上映できることを幸せに思います」と語り、高畑監督を偲んだ。高畑監督は2014年に本映画祭で名誉賞を受賞している。

米林宏昌監督、百瀬義行監督、山下明彦監督
(写真左から)米林宏昌監督、百瀬義行監督、山下明彦監督。(撮影:アヌシー国際アニメーション映画祭)

 同作は西村プロデューサー率いるスタジオポノックの短編アニメーションプロジェクトで、『メアリと魔女の花』(2017)の米林宏昌監督、『二ノ国』(8月23日公開)の公開が控える百瀬義行監督、『コクリコ坂から』(2011)などの作画監督を務めた山下明彦監督が参加。昨年8月の日本公開後、アヌシーと並んで世界4大アニメーション映画祭に数えられるザグレブ国際アニメーション映画祭(クロアチア)など20か所以上の国際映画祭で上映されてきた。

西村義明
舞台挨拶をする西村義明プロデューサー。(撮影:中山治美)

 長編ではなく短編集に挑んだ理由について、西村プロデューサーは「多くの映像作品がある中、新しい手法に挑む必要がある。短編ならそれができると思った」という。そこで制作された作品は、サワガニ兄弟の大冒険をセリフなしで描いた米林監督『カニーニとカニーノ』、卵アレルギーがテーマの百瀬監督『サムライエッグ』、透明人間の孤独を描いた山下監督『透明人間』と題材からして挑戦的だ。

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『透明人間』のイメージイラスト
監督たちが登壇したアフター・トークでは、『透明人間』のイメージイラストなどをスクリーンに表示しながら行われた。(撮影:中山治美)

 西村プロデューサーは「長編はいろんな人のことを考えて作りますが、今回は世界を救うヒーローじゃなくていい、日常の中で誰かの支えになってくれる人、僕たちにとってのヒーローを主人公にしようと思いました」と語った。

カニーニとカニーノ
米林宏昌監督『カニーニとカニーノ』(C) 2018 STUDIO PONOC

 MCを務めた本映画祭のアーティスティック・ディレクターのマルセル・ジャンから技術的な面で最も挑戦したことを問われた米林監督は「『借りぐらしのアリエッティ』や『思い出のマーニー』に続いて今回も水をモチーフに。ただし実際の川よりもっと美しい世界を描こうと思い3DCGの力を借りました。でもキャラクターは今までやってきた手描きにしたかったので、どうすれば両者が近寄れるのか試行錯誤しながら進めました」という。

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サムライエッグ
百瀬義行監督『サムライエッグ』(C) 2018 STUDIO PONOC

 続いて、百瀬監督は「主人公の少年の目線で景色を見せることと絵本のような絵」。山下監督は「主人公の感情表現を絵と音だけで表現すること」と説明したが、透明人間で表情が見えないことから「僕の狙った心情描写が皆さんに伝わったのか、いまだにわかりません」と不安な胸の内を吐露すると、会場から一斉に大丈夫と言わんばかりの「ウィ」(フランス語でイエスの意味)の声が上がり山下監督を安堵させていた。

透明人間
山下明彦監督『透明人間』(C) 2018 STUDIO PONOC

 本作はフランスでは今秋よりNetflixで配信されることが決まっている。(取材・文:中山治美)

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