小栗旬、世紀の色男に挑戦!『人間失格』ラブシーンの裏側
俳優の小栗旬が、蜷川実花監督と『さくらん』『Diner ダイナー』に続いて3度目のタッグを組む映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』(公開中)で、“破滅型作家”と呼ばれた太宰治を演じた。蜷川監督たっての希望で誕生した“小栗太宰”の魅力、見せ場の一つでもある3人の女優たちのラブシーンの裏側に迫る。
本作は、太宰の代表作である「人間失格」の誕生秘話を、彼の正妻(宮沢りえ)、2人の愛人(沢尻エリカ・二階堂ふみ)のエピソードを交え、事実に基づくフィクションとして描くストーリー。小栗には2年ほど前から出演交渉し、実現にこぎつけた。
作家としては天才である一方、私生活では妻子がありながら恋のうわさが絶えず自殺未遂を繰り返した太宰。映画では、そんな太宰の「女性たちが求めるものを与える」モテ男としての男性的魅力をフィーチャーしながら、作品を生み出す過程で周囲を巻き込むクリエイターとしてのサガも垣間見える。
蜷川監督いわく「小栗くんはあまりこういうダメ男のイメージがないと思うので、挑戦だったと思うし、実際に大変だったと思います」とのこと。「太宰が色男に見えないと作品として成立しないので、小栗くんにはとにかく『色っぽく。指先まで気を抜かないでね』と伝えました」と太宰の色香にこだわった。
20代のころにはドラマ「花より男子(だんご)」シリーズ(2005・2007)や「花ざかりの君たちへ イケメン♂パラダイス」(2007)などの学園ドラマでモテキャラを演じた小栗だが、近年は映画『銀魂』シリーズ(2017・2018)や大河ドラマ「西郷どん」(2018)などで型破りなヒーローに。新海誠監督のアニメーション映画『天気の子』(公開中)での声優も話題を呼んだ。『人間失格 太宰治と3人の女たち』で宮沢、沢尻、二階堂とのラブシーンに臨んだ小栗を、蜷川監督はこう振り返る。
「小栗くんはもともとラブシーンのイメージがないんですよね。だからなのか、初めはすごく遠慮していて(笑)。撮影初日が、静子が太宰に赤ちゃんが欲しいと懇願するシーン、太宰が飲み屋の伊藤若冲の絵の前で静子に日記が欲しいと言うところだったんですけど、まだ(芝居に)照れが入っていたので『もっと、もっと!』と言いました。そこからは怒濤のラブシーンで、本領を発揮されていましたけど」
そのラブシーンも三者三様で、太宰が相手によって全く異なる表情を見せるのもユニーク。蜷川監督のシーンの演出意図も明確だ。「静子(沢尻)の前では常にかっこつけていて、キス一つも丁寧に、大切なものを扱うように。いわゆる『月9』的な、誰が見てもかっこいい男性像に。自分を崇める富栄(二階堂)に対しては扱いがすごく雑。タバコを持ったままキスしていたり。都合が悪くなるとすぐにキスで口をふさいでごまかす(笑)。正妻の美知子に対しては驚くほど甘えっぱなし。小栗くんの芝居を見ていても思いましたけど、本当に子どものように甘えられて、絶対戻ってこられる場所だと思っている」
小栗はそんな蜷川監督の期待に応え、「大丈夫、君は僕が好きだよ」といった口説き文句もさらりとこなしながら、エゴイストだがどこかニクめない伝説的作家を見事に演じ切っている。(編集部・石井百合子)