大林宣彦監督、3000年生きて撮り続ける 特別功労賞に思い新た
映画監督の大林宣彦が第32回東京国際映画祭の特別功労賞を受賞し、1日に東京・六本木で行われた贈呈式に出席した。「ありがたいです。感謝します。文化に関する貴重な功労賞を受賞させてもらいました」と喜びを語った大林監督は、受け取ったトロフィーに「重いです」とおどけて見せつつ、映画製作への意欲を見せた。
この日は、大林作品に多く参加する、女優の常盤貴子も花束ゲストとして登壇。贈呈式の中盤で登場する予定だった常盤だが、大林監督から「貴子ちゃーん、貴子ちゃーん、どこ~」と声をかけられ、慌てて舞台袖から飛び出す一幕も。盛り上がる会場に、大林監督は「女優さんが来ると盛り上がるでしょ」と笑みを浮かべた。
賞を受ける際に「監督はこの後、30年は撮り続けるとおっしゃっていましたが、30年、35年と言わず40年でも撮り続けてください」と声をかけられた大林監督は「3000年は生きて頑張らないと。功労賞をいただき、思いを新たにしております」と返答。「未来のことは誰にもわかりませんから、あと2000年、3000年は映画を作らないと。戦争を知らない人のためにも、わたしが作り出してお見せしないと」と胸中を明かした。
大林監督の最新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』ワールドプレミア上映に併せて行われた今回の贈呈式。同作は、閉館を迎えた尾道唯一の映画館で、最終オールナイトの戦争映画特集を観ていた3人の若者が、銀幕の世界にタイムリープする物語。贈呈式後に行われた舞台あいさつには、大林監督と常盤に加え、出演者の厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦、吉田玲、山崎紘菜も登壇した。
ヒロインを務めた吉田は「プロの映画に参加するのは初めて。緊張していたんですけど、すごく楽しくて、良い体験をさせてもらえました。大林校長の学校に転校したわけですが、学校で学べない戦争の話をこの映画で学べたので、教科書よりいい教材になりました」と感想を述べる。また細田も「映画を通して成長できました。この映画を通じて、みなさんに少しでも未来のことについて考えてもらえたら」と呼びかけていた。
また常盤は、本作について「走馬灯は、その人にしか見られない。ぎりぎりのところでしか見られないって言いますけども、この映画は、前倒しでその走馬灯を見せてもらえた気がしました。周りにあるものをすべてネタにする監督ならではという気がします」とコメント。「そんなことができる監督はほかにいない。たぶん、監督の本当の走馬灯もこれだと思います。この体験を皆さんと共有できたら」と続けると、大林監督は「当たり」と満面の笑みで応えていた。(取材・文:名鹿祥史)
映画『海辺の映画館-キネマの玉手箱』は2020年4月公開