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池井戸潤の“宿命”とは?“銀行ミステリー”というレッテルと戦う

池井戸潤
池井戸潤

 数々のベストセラーを生み出してきた作家・池井戸潤が、自身の同名小説を映画化した『アキラとあきら』(8月26日公開)で描かれる“宿命”についての考えや、自身の作品に繋がる“物語に求めるもの”について語った。

竹内涼真&横浜流星W主演!映画『アキラとあきら』場面カット

 竹内涼真横浜流星がダブル主演を務める本作は、対照的な宿命を背負った2人の若者、山崎瑛(竹内)と階堂彬(横浜)が主人公。同じ名前を持つ2人は、日本有数のメガバンク「産業中央銀行」に同期入社。それぞれの情熱と信念を胸に、宿命に立ち向かう。

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 劇中でも重要なキーワードとなる“宿命”について、池井戸は、「生まれた瞬間に『これは自分の宿命だ!』と思う人はいないでしょうけど、でも、何らかのものと戦っている人はいるのでは。例えば僕だと、『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞して作家になったときに、“銀行ミステリーの誕生だ”と言われて。つまり、“銀行を舞台にした小説を書く作家”というレッテルを貼られたわけです。実はそれとずっと戦っていて。これもある意味、宿命のようなもの。おそらく、誰にでもそういったものはあるのでは」としみじみ。

 さまざまな作品がこれまでに映像化されてきたが、池井戸自身はどんな映画を観るのだろうか。「昔はいろいろ観ていたけど……、このあいだテレビで『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021年)』を観たんですが、昔のシリーズとずいぶん作り方が変わったなと思って。職業柄、どうしてもストーリーの構成に目がいっちゃう。エンターテインメントはやはり、構成が重要なので」と明かす。

 ただ、自分の作品の参考にしようとして観ているわけではない。「映画やドラマ、あるいは小説や音楽もそうなんですけど、いろんな作品を観たり聞いたりすると、つくり方の『肝』のようなものがなんとなくわかってくる。そしてそれが一つのバリエーションとして、自分の中にあるデータベースに入ってくる。僕は、プロットを用意せずに書き進めるタイプなんですが、毎日何か書いては、じゃあ次のシーンはどうなるんだ? と自問自答する、その繰り返しなんです。そして、書くことがなくて困った時に、そのデータベースが役に立つ。この作品が自分に影響を及ぼしたというものは具体的に挙げられないですが、映画や小説といったエンタメ作品は、観れば観るほど、読めば読むほど、その作品の情報がデータベースに蓄積していき、話の選択肢が増えていく。自分が何か書くときに、過去に観た作品がきっと、反映されていると思います」

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 なるべく選り好みせず映画を観るようにしているそうだが、「でも、絶対観ないなと思うのは、バッドエンドのやつ。仕事でくたびれたあとに気晴らしで観ることが多いので、結末でさらにガクッとくるのは、嫌じゃないですか(笑)。あと恋愛モノとかも観ないかな。楽しい映画、例えば『特攻野郎Aチーム』や『ミニオンズ』みたいな(笑)、何も考えずに楽しめる作品を好んで観ています。もしかすると僕の小説も、そうなんじゃないかな」と自身の作品にも言及。「僕の小説は、くたびれている人が読んで、『あー、面白かった』と言って本を閉じてくれれば最高。そう考えると、僕が映画に求めてるものと僕が書こうとしているものは一致してますね。人間の嫌な内面を知りたい人は、僕の作品は向いてないかもしれませんね(笑)」と分析する。

 ちなみに、その作品がバッドエンドかどうかは、観始めに勘付くことが多いそう。「気配でわかるんですよ(笑)、『あ、この作品のラストは、絶対こうなる』って。でも、そんな風に、構成にいちいち気を取られてしまうのが嫌なんですよね」 そのため執筆に追われているときは特に、「『孤独のグルメ』のような気楽に観られるものを観る」と明かしていた。(編集部・梅山富美子)

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