『ブラックパンサー』続編、謎多きネイモアとは?原作最古参の新キャラを徹底解剖
映画『ブラックパンサー』の続編『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(11月11日全国公開)で、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)デビューを果たす新キャラクター・ネイモア。ワカンダ王国の新たな脅威として登場する彼は、一体何者なのか? 原作コミックにおけるネイモアの歴史、判明している映画での設定、演じている俳優をまとめて紹介する。
【動画】新ブラックパンサー登場!『ワカンダ・フォーエバー』予告編
マーベルコミック最古参キャラクターの一人
ネイモア(別名:サブマリナー)は、1939年刊行のコミック第1号「Marvel Comics #1」で初代ヒューマン・トーチらと共に掲載された、マーベルコミックで最も古いキャラクターの一人だ。ちなみに、キャプテン・アメリカの初登場はその2年後の1941年。設定が似ているDCコミックのアクアマンも1941年に初登場したので、ネイモアの方が先に誕生している。
ネイモアは、水棲人類の王国アトランティスの王女と、アメリカ砕氷船の船長の間に生まれたアトランティスの王子。海中を時速80キロで泳ぎ、空中飛行、怪力、イルカなどと意思疎通するなどの特殊能力を持ち、七つの海と海底都市アトランティスを守るために戦う。歴史が長いキャラクターなので、コミックではヒーローとして活躍するだけではなく、ヴィランとしてX-MENらと戦ったこともある。
MCUでの設定は?
予告編を見る限り原作コミックとの共通点は多く、水中の高速游泳、空中飛行、尖った耳、両足首の翼、黒髪、三叉槍などはコミックと同じだ。
大きな違いは、彼が治める海底王国の設定。『ブラックパンサー』でアフリカ先住民の文化を踏まえた美学でうならせたライアン・クーグラー監督が、本作では南米先住民の文化を描く。ネイモアが統治する王国の名は、コミックでは古代ギリシャの伝説と同じアトランティスだが、映画ではタロカン。タロカンは、マヤやアステカなど南米大陸北部の先住民の古代文明を下敷きに描かれる。予告編では、エムバクがネイモアについて「ヤツは将軍でも王でもない “ククルカン”羽をもつ蛇の神だ」と言うが、ククルカンとはマヤ神話の至高神の名であり、映画のネイモアが身につけている装飾品も、南米の古代文明を意識してデザインされている。
また、単純なヴィランではないところもコミックと同じ。ネイモアを演じるテノッチ・ウエルタは、本作のネイモアはただの悪役ではなく、行動の発端は『ブラックパンサー』のラストでティ・チャラがワカンダの存在を世界に公表したこと、その影響でタロカンに危険が迫りネイモアが動き出すと、英Empire誌のインタビューで語っている。
もう一つ、ウエルタの発言で気になるのは、ネイモアがコミック同様「ミュータント(突然変異体)」であるということ。ドラマ「ミズ・マーベル」でもヒロインの遺伝子がミューテーション(突然変異)だというセリフで話題になったが、マーベルでミュータントといえば『X-MEN』だろう。ネイモアの登場は、X-MENのMCU本格参戦の前触れかと話題になっている。先日『デッドプール』第3弾に『X-MEN』の人気キャラクター・ウルヴァリンが登場することが発表されたが、それ以外に企画があってもおかしくはない。
演じるのは、先住民の血を引くメキシコ人俳優
映画でネイモアを演じるテノッチ・ウエルタは、メキシコ先住民プレペチャ族の先祖を持つ。1981年メキシコ生まれのテノッチは、ケイリー・ジョージ・フクナガ監督が手がけた映画『闇の列車、光の旅』(2009)でギャングのリーダー役を務めたほか、近年はドラマ「ナルコス:メキシコ編」(2018~2020)、『パージ』シリーズ最新作『フォーエバー・パージ』(2022)などにも出演している。
Men's Health 誌インタビューによれば、彼がネイモア役と初めて接点を持ったのは、2020年初頭、メキシコシティの自宅にかかってきたクーグラー監督からのZoomコール。監督はこの役について説明し続けたが、彼は大役に凍りついてしまって何も耳に入らなかったものの、監督に「どう思う?」と聞かれて「いいと思います、やります、絶対やります」と答えたという。
大学時代にフットボールをやっていたテノッチは、それから週6日のトレーニングを積み重ね、ネイモアの身体を創り上げた。実は水泳経験があまりなく、「これまで溺れたことはありません」と答えて特訓し、ダイビングや水中で5分間息を止めるまでに成長し、水中での撮影も難なくクリアした。
こうして生まれたネイモアが、新たなブラックパンサーとどんなドラマを繰り広げるのか。彼の王国タロカンとはどんな国なのか。謎多きネイモアのMCU入りは目前に迫っている。(文・平沢薫)