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『室井慎次』想像以上の新キャラ誕生 脚本・君塚良一が絶賛する“本広演出”の妙

青島を彷彿させる新キャラ・桜章太郎(右)
青島を彷彿させる新キャラ・桜章太郎(右) - (c)2024 フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝

 「踊るプロジェクト」12年ぶりの新作映画『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』(全国公開中)。社会現象を巻き起こした「踊る大捜査線」に登場した室井慎次(柳葉敏郎)が主人公の2作は、27年前の連続ドラマからほぼ全てのシリーズ作品の脚本を書き続けた君塚良一の室井に対する思いから誕生した。“最後の室井慎次”の物語を書き終えた君塚が、「踊る大捜査線」への想いや『室井慎次』に登場するキャスト&キャラクターについて語った。(以下、『敗れざる者/生き続ける』のネタバレを含みます)

【画像】最新の青島俊作!『踊る大捜査線 N.E.W.』スーパーティザービジュアル

室井慎次は“柳葉敏郎の生き様が滲み出た”キャラクター

柳葉敏郎が27年間共に歩んできた室井慎次 - (c)2024 フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝

 「室井慎次という人間の長い物語の、最後のチャプターを作りたかった。今作はそういう、あくまでパーソナルな僕の思いが発端です。それを形にすることができたのは、とてもよかったと思います」と君塚はすがすがしい表情を見せる。「踊る」シリーズの生みの親ともいえる君塚は、「僕は彼がすごく好きなんです」と明言する。

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 君塚から見た室井の魅力とは何なのだろうか。「俳優自身の生き様が滲み出ちゃった役なんです。室井は、もともと官僚で悪役ですから。あの立ち位置なら、ふつうは最後に改心するくらいなんです。それが、どんどん青島(俊作/織田裕二)や現場の人間にシンパシーを感じて、柳葉さんのもともと持っている人情味や、人をきちんと見ようとするところが滲んできた。成長したり膨らんだりして深くなっていったんです。僕らも、それに応えられるようにしました」と室井というキャラクターの構築過程を明かした。「そういう役を、当たり役っていうんですよね」

 今作には、その室井に協力する形で、秋田県警本部長の新城賢太郎(筧利夫)と警察庁官房審議官の沖田仁美(真矢ミキ)が登場する。「僕の中では、彼らのキャラクターは完全に手の内にあるから、いまどうなっているかもぜんぜん迷わないんです。ポイントで物語を進めていくエンジンになっています。あとは友情ですよね。新城は室井側に行っちゃった男で、出世競争に負けてしまう。沖田は冷静に見ていて、でも心の奥では室井に共感しています。僕は彼らも好きなんですよ」

福本莉子が演じた日向杏 - (c)2024 フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝

 さらに、今作では「踊る」史上最悪の猟奇殺人犯・日向真奈美(小泉今日子)の娘・杏を、福本莉子が演じている。「ああいう強烈な人間は、ハリウッド映画でも続編とかで、息子とか兄弟が出てきますよね。演じるのはなかなか難しいんですが、福本さんはとても素晴らしかったと思います。真奈美に似て見えるのは、彼女の演技力ですよね」と絶賛。また「真奈美は刑務所に入っていますが、『やっぱり登場させようよ』となりました。そういうファンサービスを忘れなかったのが『踊る』なんですよね。今回、最初の段階では僕の個人的な思いで動いて、それを忘れかけていましたけど、やはり違うと思って、湾岸署の仲間たちも少し顔見せしましょう、となりました」と湾岸署にいた緒方薫(甲本雅裕)や森下孝治(遠山俊也)の登場理由を明かした。

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 松下洸平が演じた捜査一課の刑事・桜章太郎も際立っていた。「最初は、青島っぽい人が室井さんとぶつかると面白いかもということだったんです。事件解決にそれほど尺を取れないので、そこをきゅっと締めるために、感覚的に優秀な直観系の人を置こうと思いました。でも結果的には青島には似ていない。これは、(本広克行)監督と彼が、ちょっとオーバーアクトな男という違うものにしているんです。おそらく、ずっと容疑者をそうやって翻弄して、ボロを出させてきたんじゃないかという刑事なんですよ。青島とは違うやり方ですね」とキャラクターを説明。「僕が思っていたものとはぜんぜん違って、それ以上のものでした。想像すらしていなかったキャラクターを作ってくれました。なかなかの男です」

ただひたすらに書いていた

受け継がれる“ムロイズム” - 室井の盟友・新城賢太郎(左)- (c)2024 フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝

 そして君塚は、本広克行監督の手腕についても大絶賛する。「僕は脚本には責任を取りますが、基本的にキャスティングや美術などは、全てお任せします。監督とプロデューサーを信じていますから」としたうえで、「今回は特に、本広監督の演出力がすごいなと思いました。途中からはもう、僕はあまりト書きを書かなくなっていましたね」。たとえば、『敗れざる者』のラストで車庫に吊るされた室井のコートが燃えるシーンは、「十字架みたいに燃えるでしょ。あれは、監督がそのシチュエーションに自然にもっていってた。僕は書いてないです。今回、コメディーにするのか、泣かせるのか、すごく迷ったと思うんですけど、全部がいい塩梅でした」と感嘆。「以前の『踊る』のように、カットをガンガン割って笑いを作るやり方をしてないし、泣かせも意外と淡々とやっていて、ベタっとしてない。日本映画とアメリカ映画の中間くらいの演出をされていました。新しい本広監督の世界です。やっぱりすごい男だと思いました」

 今回の物語は、家族がベースとなっている。「おそらく監督は、初挑戦に近い世界だったと思いますが、本広視点がちゃんとあった。僕は、彼が昔撮った映画『UDON』に近いと感じました。あれは、彼の故郷に対する視点でしたからね。故郷というものに対しては、誰もが優しくなるじゃないですか。今作も室井の故郷ですから」

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脚本家・君塚良一にとって『踊る大捜査線』とは?

 君塚にとって「踊る」とは何なのだろうか。「僕の記憶では、ただひたすらに書いていたというだけです。あまり迷わず、立ち止まらず、『次は映画』『次は舞台』と言われるままに書きました。途中でグズグズ言わずに続けてこられたのは、きっとフィットしていたんですよね。僕のモノを書くときの感じとタッチと技術と好き嫌い、趣味嗜好がぴったり合った作品なんだと思います」と思い返した。「もちろん、その時々のテーマはありました。今回はこうしよう、今回はこのルールを破って新しいことをやろう、ということは毎回考えていましたが、とにかくひたすら書いていました」

 ここまで続く大ヒット作になった理由を、君塚はどのように考えているのだろうか。「とにかく、視聴者と観客のことを忘れなかった。観てくれる人をね。それが支持していただけた理由だと思います。その人たちを裏切らない、その人たちをガッカリさせない、その人たちを喜ばせる。それがなかったらインディーズ的な映画ですよね。こっちは完全な娯楽映画ですから。だから、ただ書いていただけじゃなくて、『観客のことを忘れずにひたすら書いていた』というのが正しい記憶です」(取材・文:早川あゆみ)

『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』は全国公開中

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