【ネタバレあり】『深い谷の間に』衝撃の後半に日本映画の影響 恐怖の“アイツ”誕生秘話

Apple Original Films『深い谷の間に』を手がけたスコット・デリクソン監督がインタビューに応じ、作品のトーンが大きく変化する衝撃の後半パートについて語った。(以下、映画のネタバレを含みます)
物語の主役は、ある谷の東西に建てられた監視塔に配置された男女の敏腕スナイパー、リーヴァイ(マイルズ・テラー)とドラーサ(アニャ・テイラー=ジョイ)。極秘任務を遂行するスナイパーは、外との連絡手段は断たれ、監視塔同士の連絡も禁止されていた。やがて二人は、与えられた任務が、谷の中に潜む“危険な秘密”から世界を守るためだと知る。
デリクソン監督が本作を「アクション、ホラー、政治スリラーが混じったロマンティックなSF」と表現するように、前半はリーヴァイとドラーサが距離を縮めていくロマンチックな展開で、後半は谷の底に眠る衝撃の秘密が明かされ、二人がおぞましいクリーチャーたちと遭遇するさまをSFホラー調に描き出す。

植物と人間が融合したクリーチャーのビジュアルは、観客の恐怖をあおる。デリクソン監督はデザインについて、「グロテスクで恐ろしいイメージを追求していきました」と振り返り、「ゾンビ映画のような感じにはしたくなかったし、よく見かけるものとも違った印象にしたかったんです」とこだわりを明かす。
劇中では、刀のような武器を使うクリーチャーも登場する。デリクソン監督曰く、これは彼が愛する日本映画がアイデアの源になったという。「私は日本映画が大好きで、黒澤映画について大学の授業も担当しています。東京にも3回行ったことがあります。日本映画こそが最高の映画だし、黒澤明が映画史上最高の監督だと言える理由はいくつもあるんです。この映画には、サムライ映画を含む日本からの影響があり、カタナの要素もその一つです」
日本映画への愛を少しでも盛り込みたかったというデリクソン監督は、「この映画には、非常に強い日本映画の影響が感じられると思います。なぜなら、超常現象や幽霊、クリーチャーの物語において、日本映画の想像力こそ映画史上最高の作品を生み出してきたと私は考えているからです」とも続けた。

クリーチャーが潜む谷底は霧がかかっており、リーヴァイとドラーサが移動するにつれて、霧の色が黄色、紫色、赤色と変化するのも印象的だ。「大胆で躍動感のある色にしたかった」とデリクソン監督。参考になったのは、イタリアン・ホラーの巨匠であるマリオ・バーヴァやダリオ・アルジェントの作品だったという。「彼らは芸術的なホラーの中で、あえて色彩を極端に用いることに挑戦していました」
また、「色や彩度を単なる見た目だけのために使うのではなく、物語の中で意味を持たせる必要があると考えました」とデリクソン監督。「そこで、(霧の色を)峡谷の謎、そこで発見されるものに結びつけ、汚染物質と直接リンクさせました。上空からのショットで、それぞれの色の由来が視覚的に明らかになり、『ここからその色が生まれたんだ』と理解できるようにしています」と霧に込めたこだわりを明かしていた。(編集部・倉本拓弥)
Apple Original Films『深い谷の間に』Apple TV+にて配信中