ヒトラーへの285枚の葉書 (2016):映画短評
ヒトラーへの285枚の葉書 (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
意義のある話だが、語り方が無難すぎ
ナチ支配下のドイツで、ひとり息子を戦争で失ったベルリンの夫妻が、 反ヒトラーのメッセージを書いた絵葉書を街中に配りまくるという、実話にもとづく映画。いつの時代にも語られるべき話ではあるが、もっと危機感や絶望感をもたせて語ってほしかった。夫婦の愛もストーリーの重要な柱だが、途中、夫妻が出会った頃のことを思い出して語るシーンは、取ってつけたような感じがする。あの年齢の夫妻が、ああいう状況でああいう会話をするものだろうか?ダニエル・ブリュール演じる捜査官が最もおもしろいキャラクターだと思って見ていたのだが、最終的な彼の行動には説得力がないと感じた。
今だからこそ、何も変えられなくても行動する勇気を持ちたい
息子の戦死をきっかけに反ナチ運動を始めた夫妻の物語だが、運動自体はとても微弱。ヒトラーや戦争批判を手書きしたハガキを街のあちこちに置くだけの手法は社会変革蜂起よりは、怒りや悲しみの発散に近かったように思う。気さくなご近所づきあいが戦争によって一転し、誰もが疑心暗鬼になったのも夫妻の気持ちを暗くしていく。戦争テーマの人間ドラマで何度も見ているのに小さな勇気に感動するのは、今の社会にも見て見ぬフリがはびこっているからだ。忖度政治が横行し、第3次世界大戦勃発の可能性も増す今だからこそ、小市民としての勇気ある行動に胸を打たれた。ブレンダン・グリーソンはじめ役者の真摯な演技が光る佳作だ。