ジャコメッティ 最後の肖像 (2017):映画短評
ジャコメッティ 最後の肖像 (2017)不可解な芸術家の本性を通し、クリエイティブの神髄を垣間見る
伝記映画ではない。最後の肖像画のモデルとなった男の視点を中心とする、創作の18日間。芸術家の父と作家の母をもつ名優スタンリー・トゥッチが監督を務めた本作は、威容とは対照的な姿に光を当てる。約束を反故にし作品はなかなか仕上がらず、ただならぬ空気が生まれる。エゴイスティックで理解不能、スランプに陥り、爛れた私生活が露わになる。ジェフリー・ラッシュの憑依ぶりは凄まじく、厄介な芸術家の本性が立ち現れる。ここには、矛盾を孕んだクリエイティブの神髄がある。人間の本質を追究したジャコメッティ作品は、思考の途上にすぎない。作品がまとう、時間と空間へのイマジネーションを大いに掻き立てられる。
この短評にはネタバレを含んでいます