略歴: 1971年、東京都出身。大学在学中、クイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作、「映画秘宝(洋泉社)」編集部員を経て、フリーとなる。現在は映画評論家として、映画誌・情報誌・ウェブ、劇場プログラムなどに寄稿。また、香港の地元紙「香港ポスト」では20年以上に渡り、カルチャー・コラムを連載するほか、ライターとしても多岐に渡って活動中。
近況: 『インファナル・アフェア4K 3部作』『search #サーチ2』『縁路はるばる』『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』『恋のいばら』『この小さな手』『香港怪奇物語 歪んだ三つの空間』(公式HP)『呪呪呪/死者をあやつるもの』(公式HP)などの劇場パンフにコラム・インタビューを寄稿。そのほか、キネマ旬報ムック「細田守とスタジオ地図の10年」にて細田守監督×ポン・ジュノ監督、「CREA WEB」にてアイナジエンドさん、倉悠貴さん、Evan Callさん、「GetNavi web」にて中井友望さん、武田玲奈さん、北香那さん、浅川梨奈さん、三浦翔平さん、森山みつきさんなどのインタビュー記事も掲載中。
『ツイスターズ』『エイリアン:ロムルス』に続き、オリジナル好きのツボを突く続編。とにかく36年経ってもティム・バートン監督による、やや悪趣味なアートセンスが劣るどころが変わらず。欧米人のように大爆笑とはならずとも、そのスラップスティックなノリに引き込まれてしまうのも変わらず。こちらもリディアの愛娘をヒロインにした次世代の物語でありつつ、「バナナ・ボート」はもちろん、“ワケあって”業界から干されてるジェフリー・ジョーンズが演じたチャールズのトンデモ扱いに至るまで、サービス満点。おまけに、日本語吹替版にはまさかのサプライズも! このタイトルなら、3作目も期待せずにはいられない。
山水画ばりに息を呑む美しい光景と金に執着した人間模様を対比に描いたデビュー作『春江水暖』をアップデート! 美しい茶畑から一転、マルチ商法の世界を通し、人間の脆さや醜さを露呈していく。楽しいバス旅行の行き着く先は、この世の地獄。映像や音楽どころか作品全体が転調し、『レクイエム・フォー・ドリーム』ばりのカルトムービーに。化粧が崩れ、泣き叫ぶヒロインの姿は『ジョーカー』と化し、観る者は出口の見えない不快感に打ちのめされていく。これを中国映画界でやってしまうグー・シャオガン監督の才気に加え、タイトル&ポスターヴィジュアルのギャップなど、間違いなく今年のベストテンに入る一本だ!
「ブラッシュアップライフ」同様、コメディとサスペンスを融合させた水野格監督の独特すぎる演出リズムは、とにかく心地良い。さらに、絶妙な掛け合いも魅せる田中圭と高橋文哉がとにかく楽しそうに先輩・後輩役を好演。おまけに、近年ちょっと面白い役回りが増えた染谷将太もアヤしさ全開だし、ゲストの使い方もさすが。それだけでOKという観方もあるのだが、本作の脚本はバカリズムではなく、水野監督自身による完全オリジナル。そのためか、ネタバレ厳禁なラストも含め、かなり強引に感じられ、腑に落ちない点もいくつか。とにかく真面目に謎解きすればするほど、評価が分かれそうな問題作だ。
アン・ホイ監督の『客途秋恨』より、リベンジムービー『新・悪魔のえじき 暴虐女傑復讐鬼』など、カルトな「台湾黒電影」の印象が強すぎる国民的女優ルー・シャオフェンが24年ぶりにスクリーン復帰。成長し、老いていく常連客を自身の子のように温かく見守る普通のヒロインは意外にも思えるが、堂々の貫禄で、パーマ姿が似合う“床屋のおばちゃん”を好演。そんな彼女のモデルがフー・ティエンユー監督の実母ということもあり、“最高の親孝行映画”としても観ることもできる。また、原風景に思わず魅せられてしまうロードムービー展開になって登場するチェン・ボーリンやリン・ボーホンのゲスト出演も見逃せない。
飛ぶ鳥落とす勢いのグレン・パウエルが多羅尾伴内ばりな七変化で笑いをかっさらうパウエル無双映画。じつはイーサン・ホーク並みにリチャード・リンクレイター監督と相性良く、今回は脚本&プロデューサーとしても参加。囮捜査官として変装に目覚めたことで、私生活でもいい男に変貌するお約束に加え、しっかりエロいアドリア・アルホナとの狂ったラブコメ、何とも言えないラストまで、どこか後期ウディ・アレン監督作の雰囲気も味わえる。「たまたま飛行機内で観たら“ヒット”した」感覚に近いが、引用される殺し屋映画の一本で、『殺しの烙印』じゃなく『拳銃は俺のパスポート』が登場するのは謎すぎ!