本日公休 (2023):映画短評
本日公休 (2023)ライター2人の平均評価: 4
あの頃の“床屋のおばちゃん”を思い出す
アン・ホイ監督の『客途秋恨』より、リベンジムービー『新・悪魔のえじき 暴虐女傑復讐鬼』など、カルトな「台湾黒電影」の印象が強すぎる国民的女優ルー・シャオフェンが24年ぶりにスクリーン復帰。成長し、老いていく常連客を自身の子のように温かく見守る普通のヒロインは意外にも思えるが、堂々の貫禄で、パーマ姿が似合う“床屋のおばちゃん”を好演。そんな彼女のモデルがフー・ティエンユー監督の実母ということもあり、“最高の親孝行映画”としても観ることもできる。また、原風景に思わず魅せられてしまうロードムービー展開になって登場するチェン・ボーリンやリン・ボーホンのゲスト出演も見逃せない。
正しく「基本を大切に」の心得に則った良質の仕事
「基本を大切にすること。細部まで入念に。仕事が丁寧だと信頼される。最高のサービスを」――これは下町で40年も個人経営の理髪店を続ける店主(『客途秋恨』のルー・シャオフェン/大阪アジアン映画祭俳優賞)が、若い時に教えを受けた“仕事の心得”だ。彼女はこうして常連客をつかみ小商いを営んできた。この主人公を定点として、年少世代との価値観の違いを踏まえながら様々な人生交差点が描かれていく。
オーソドックスなドラマスタイルを貫きつつ、「老い」にも「前進」にも寄り添う姿勢はノスタルジックに見えて未来形。そして芝居、語り、音楽まで、仕立てのサイズがぴったり合っている。主人公は監督の母親がモデルだという。