清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • ウィッチ
    ピュアとエロスを併せもつアニヤ・テイラー=ジョイに眼は釘づけ
    ★★★★

    “魔女狩り”という比喩に閉じ込められ、一方で、箒に乗って天翔るヒロインを指すと思い込む人も多くなった、魔女。本作は、17世紀アメリカ・ニューイングランドで怖れられた魔女の本質を描き出す。排斥された七人の親子。突如として消えた赤ん坊。次々と降りかかる災厄。湧き起こる疑心暗鬼。恐怖と神秘が交錯する荘厳な森の光と闇が、美しくも怖ろしい。数々の映画祭が称えた新人監督の手腕もさることながら、ピュアとエロスを併せもつ96年生まれの新星アニヤ・テイラー=ジョイに眼は釘づけになる。真っ白な肌にかすれた声、あどけなさが残る表情に汚れなき大きな瞳。信仰と誘惑の狭間で揺れる彼女の存在は、見事にテーマを体現している。

  • パワーレンジャー
    カタルシスよりも多様な若者たちの葛藤・結束・成長を優先
    ★★★★★

     フィジカルが躍動する場は“採石場”。洗練されたヒーローデザインは、あくまでも“卵形の頭とタイトな全身スーツ”。そしてゴージャスなフルCGの“合体ロボ”。「スーパー戦隊」の骨格を守りつつも、製作費120億円でワールドワイドに展開するには、こうしなれば説得性に欠けるとする監督のこだわりが炸裂。鬱屈を抱えたヒーローらしからぬ他人同士の若者たちが連帯感を強めるまでの物語が延々と描かれるのだ。出自が異なる選ばれし5人の結束と成長がなければ力は発揮できないとする演出には、オリジナル版への批評性を感じさせるが、歌舞伎や時代劇の流れを汲み、大見得を切る「型の文化」であることが理解されていないのは残念だ。

  • カーズ/クロスロード
    ミドル・クライシスにもがくピクサー自身の、世代交代の神話
    ★★★★

     自らの限界を感じ始めたマックィーンと新世代レーサーの台頭。子供たちを置き去りにするほど、“中年の危機”に向き合う深刻な作り。マックィーンのボディ・ナンバーは第1作制作当初、ジョン・ラセターの生年を表わす「57」だったが、『トイ・ストーリー』の制作年「95」に変更したという経緯がある。つまり主人公はラセターでありピクサーだ。シリーズの精神的支柱ドックは、古巣ディズニーの黄金期「50年代」のレジェンド。オモチャやクルマをモチーフに、アナログとデジタルを対比させてきたラセターも還暦を迎え、本作を新人監督に委譲した。あまりにも内省的な物語。これは、世代交代の現実に直面したピクサー自身の神話である。

  • パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊
    第1作への回帰、主要キャラ再登場…すべてはプロデュースの勝利
    ★★★★

     海洋映画の名手監督の起用、若き男女が呪いを解く物語の中心にいて、その周辺をジャックが飄々と立ち回る第1作に立ち返った構造、そして何より、満を持してのウィル&エリザベスの再登場。すべてはプロデュースの勝利だ。剣戟や大海獣といったスペクタクル要素に欠けるのは残念だが、3作目に登場していたヘンリーの成長譚として、宿敵バルボッサの完結譚として、見応えは十分。北を指さないコンパスや、瓶に閉じ込められたブラックパール号など、過去4作にちりばめられたネタを有効活用し、脚本テクニック的にも抜かりなし。邦題は見納め感を醸し出すが、続編やる気満々の幕切れ。かつて絶滅していた海賊映画サーガは終わりそうない。

  • メアリと魔女の花
    魅惑的だが危うい魔法なんかに頼らず、自らの力で生きていく覚悟
    ★★★★★

     ジブリ出身者が立ち上げたポノック第1弾。モチーフは魔法。馴染み深い絵柄や動きを随所に見て取り、安心感を抱き嘆息もする。ジブリ的なるものから逃れようとするもがきこそ醍醐味だ。この魔法は科学文明の暴走を思わせ、社会的なメッセージ性を孕んでいるが、ひょんなことから不思議な力を身につけてしまい称揚される平凡な主人公に、米林宏昌監督は自らを重ね合わせてもいる。魔法学校の校長と科学者の存在は、さしずめ鈴木敏夫Pと宮崎駿監督か。魅惑的だが、所詮消えてしまう危うい魔法などに頼らず、自力で生きていく覚悟こそテーマ。ポノックはまだメタモルフォーゼの途上にある。魔法を解くために魔法の力を借りているのだから。

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