清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

« Prev 全380件中216~220件を表示しています。 Next »
  • 美女と野獣
    ミュージカル劇の音場までを創造した日本語吹替版が素晴らしい
    ★★★★★

     ベルの両親の過去を始め若干の改変は加えられている。見かけはいいが心の醜い男と、優しくて知的な内面をもつ野獣との対比を中心に、視覚的デザインと音楽性は91年アニメ版に忠実で、窮屈さを覚える。喧伝されたディズニー映画初のゲイの登場に何ら違和感なく、時代はその先へと進んでいる。ならば近年の、王子様待望論を打ち消すディズニーヒロイン像を掘り下げるべきだった。「外見で判断してはいけない」というテーマを貫くため、本質を見抜くヒロインが、野獣のままの彼と結ばれるバージョンこそが現代的アップデート版だったのではないか。それはともかく、単なるアフレコを超えミュージカル劇の音場までを創造した吹替版は素晴らしい。

  • チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~
    実際に上達した女優たちのドキュメンタリー的要素に欠けている
    ★★★★★

     弱小チームが特訓の末、奇跡の勝利を収める達成劇。『がんばれ!ベアーズ』を引き合いに出すまでもなく鉄板のフォーマット。なのに、快作になり得なかったのは何故か。まず演出タッチが人間ドラマとキャラクタードラマの中庸にあって、感動へ導く軸足が定まらず展開がもたつく。肝心のダンスの見せ方にフラストレーションが募る。練習を重ねて実際に上達した、広瀬すずら女優たちのドキュメンタリー的要素に欠けている。致命的なのは決勝戦。長回しで描写しないせいもあって、米国制覇の説得性は脆弱だ。結果的に、“ブラック部活”なる概念さえ生まれた今、個よりも集団を尊重する古き良きスポ根的ドラマの美徳を甦らせることはできなかった。

  • パッセンジャー
    孤独と絶望がもたらす、世にも歪なシチュエーション・ホラー
    ★★★★★

     壮麗な宇宙船のデザインに本格SFを期待すれば、愕然とする。実に歪な映画だ。言わば、宇宙空間で予定よりも大幅に早く目覚めてしまった乗組員のシチュエーション・ホラー。絶望的な孤独に耐え切れず、広大な船内は『シャイニング』のオーバールック・ホテルさながらの狂気の空間と化す。引用の仕方があからさまで、興醒めではあるが。歪さの核心は、主人公の屈折と欲望がもたらす悲劇を、世紀のロマンへと導く演出にある。公共性が壊れた今、この身勝手な行為を冷徹に見つめれば、カルト化の可能性もあったかもしれない。惹句の“宇宙版タイタニック”とは、エンディングから始まる、もうひとつの恐ろしき『パッセンジャー』だ。

  • キングコング:髑髏島の巨神
    〈コングの黙示録〉で導入する恐怖の「ラ・ラ・怪獣ランド」体験
    ★★★★★

    『地獄の黙示録』の神秘性に、大怪獣バトル映画の醍醐味を掛け合わせるというハイブリッドの意外性。ツカミは十分だ。コング映画の要素から、美女と野獣のロマンスと都市上陸大破壊のスペクタクルを配して見せ場を神秘の島に限定し、野生のコングの生命力と戦闘能力をそそり立たせた。怪獣どもの造形はオリジナリティに富んでいる。小気味よいテンポで魅せる、スピーディーかつ多彩な肉弾戦の組み立て。70年代カルチャーや日本発のサブカル、ゲーム世代の感覚の取り込み。『ラ・ラ・ランド』のチャゼル監督と同じ32歳の俊英ロバーツ監督が生み出した、ポップな「ラ・ラ・怪獣ランド」は、最強のエンターテインメント映画だ。

  • ひるね姫 ~知らないワタシの物語~
    日常を起点とする三世代ファンタジーは神山健治作品の第四形態!
    ★★★★★

     緻密に仕組んだ少女の夢と現実の交錯によって、三世代にわたるファミリーストーリーを解明していく画期的なファンタジーだ。夢の世界は、祖父が築き上げた窮屈な高度テクノロジー社会に、虚構や創造を愛する父が反旗を翻すイメージ。その夢が知られざる真実を娘に示唆していく過程がスリリング。テクノロジーの発展をハードとソフトの相克と捉えない、屈託なき娘のしなやかな想像力は、世代間の綻びを修復する。神山健治作品が、同時代の観客に合わせて進化した。世界と個の関係を描いた『攻殻S.A.C.』以降を第二形態、世代間の差異を描いた『東のエデン』を第三形態とすれば、日常を起点とする本作は神山作品の第四形態に当たるだろう。

« Prev 全380件中216~220件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク