チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~ (2017):映画短評
チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~ (2017)ライター2人の平均評価: 3
実際に上達した女優たちのドキュメンタリー的要素に欠けている
弱小チームが特訓の末、奇跡の勝利を収める達成劇。『がんばれ!ベアーズ』を引き合いに出すまでもなく鉄板のフォーマット。なのに、快作になり得なかったのは何故か。まず演出タッチが人間ドラマとキャラクタードラマの中庸にあって、感動へ導く軸足が定まらず展開がもたつく。肝心のダンスの見せ方にフラストレーションが募る。練習を重ねて実際に上達した、広瀬すずら女優たちのドキュメンタリー的要素に欠けている。致命的なのは決勝戦。長回しで描写しないせいもあって、米国制覇の説得性は脆弱だ。結果的に、“ブラック部活”なる概念さえ生まれた今、個よりも集団を尊重する古き良きスポ根的ドラマの美徳を甦らせることはできなかった。
思春期コメディは、かくあるべし!
『俺物語!!』でコミックの映画化を成功させた河合勇人監督が、実話をどう料理するのか? そんな興味に引かれて見たが、いやはや、コレも快作だ。
福井県のチアダンス部が世界の頂点に立つ実話の痛快さをベースにして、女の子たちをとにかくチャーミングに見せる。広瀬すずら女優陣が輝いているのは、撮り方はもちろん、孤独や不安といったそれぞれの胸の内がしっかり見えるから。思春期ドラマはかくあるべし、だ。
リアルなだけでなく、笑わせるところは笑わせる。風見鶏の教頭や高飛車な同級生など、憎めない小悪役、憎むべき悪役の配置も絶妙。そんなキャラクターのデフォルメにも河合監督のコミック・センスが光る。