清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • エヴァ
    多様な解釈を呼び起こす“偽り”のファム・ファタール映画
    ★★★★★

     あらゆる意味で期待はかわされるが、多様な解釈を呼び起こす。原作「悪女イヴ」や、ジャンヌ・モロー主演映画化版『エヴァの匂い』とは異質な作劇。娼婦に扮する大女優イザベル・ユペールは謎めく妖艶さに欠けるが、そこに大いなる意味をもたせている。老作家から戯曲を盗んでデビューした新進作家ギャスパー・ウリエルが、次作創造に苦闘する過程で或る女性と出会う。人間を観る才能なき偽作家が、彼女の本性をファム・ファタールだと思い込んだことに始まる破滅の物語だ。恋愛を含むおよそ全ての人間関係は、主観という“誤解”の上で成り立っている悲喜劇にすぎないなのかもしれない――これもまたひとつの解釈。貴方の眼にはどう映るか?

  • 志乃ちゃんは自分の名前が言えない
    南沙良×蒔田彩珠、10代の名女優が劣等感で惹かれ合う化学反応
    ★★★★

     キラキラの学園ものの蔓延は生きづらさが極まった現代の裏返しであることを、この映画の学校的日常の中の実存を目の当たりにすれば確信できる。上手く話せない志乃を演じる南沙良と上手く歌えない加代に扮する蒔田彩珠――てらいなき若き名女優が「劣等感」で惹かれ合うケミストリー。今にも壊れそうな繊細な関係性は鬱屈から高揚へ、そして…という大きな振り幅で思春期のリアルを伝える。海辺のMV的風景と鳴り過ぎるBGMは少女の内面への肉薄を妨げ、ウザい同級生男子の過剰な関与は夾雑物にも思える。とはいえ、足立紳(『百円の恋』)脚本による、湯浅弘章の長編商業映画デビュー作は、今年の日本映画史にしっかりと刻まれるだろう。

  • ジュラシック・ワールド/炎の王国
    生命を宿す以上、恐竜を見殺しには出来ないというテーマの大転換
    ★★★★

     様々な要素が“衝突”した作劇に違和も覚えるが、ハイブリッドな構造は野心的だ。孤島の恐竜暴走パニックから、大邸宅でのゴシックサスペンスへ。純然たるエンタメに乗せ、現代へ警鐘を鳴らすメッセージ性。人間に懐いた恐竜と、遺伝子組換えによる凶暴恐竜の混在。CGのみならず、アニマトロニクスで強調する実存。文明を脅かす恐怖の対象が大自然の猛威で絶滅の危機に瀕し、テーマはコペルニクス的転回を見せる。たとえ人工的に創造された生き物であっても、生命を宿す存在である以上、人間はどう向き合うべきか。自らの作家性に引き寄せるバヨナ監督が、子供の視座に託す終盤の展開は息を呑む。次回完結編への興味は、俄然高まった。

  • バトル・オブ・ザ・セクシーズ
    男尊女卑との格闘×性的指向への覚醒という「抑圧」のレイヤー
    ★★★★

     男性優位社会の中で差別に苦しむ女子テニスプレイヤー。#MeeToo運動の波以前の企画だが、ウーマンリヴの時代の実話がこうも現代性を帯びてしまうのは、時代の“空気”が変わり監視は強まっても、本質が変わっていない証。男尊女卑との暗闘を、肉化したエンタメに昇華した構造が見事だ。そしてヒロインが、自らの本当の性的指向に目覚めるエピソードが抑圧のドラマに奥行きを与え、脇を固める助言者アラン・カミングの存在が味わいを深める。衣装やメイクはもちろん、現代的な映像処理を極力排し、35ミリフィルムと当時の撮影手法だけを用いて再現した映像のルックは、あの頃へたちまちスリップさせてしまう効果がある。

  • 菊とギロチン
    抗え!闘え! 暫定的:2018年日本映画ベストワンはこれだ
    ★★★★★

    「関東大震災後」の閉塞極まりない、右傾化していく世の中に抗う者の生き様が、「3.11後」を照射して時代と斬り結ぶ。全くもって無政府主義者には見えない東出昌大や寛一郎は一見ミスキャスだが、その不甲斐なさは身体性を欠いた破滅志向の運動家のリアリティを体現し、同様に社会の外で生きるしかない女相撲の一団をより輝かせる。抑圧的な男社会に耐えられない者も被差別者も、土俵上でぶつかり合うことで自らを発散し、人生と格闘する。彼女達が海岸で踊り狂うシーンは、自己を解き放つとともに体制への大いなるアンチテーゼとなって、観念的な男ども以上にアナーキー。2018年ベストテン上位に食い込むべき活力に満ちた日本映画だ。

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