略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
ハワイ行きの韓国機が北のテロリストにハイジャックされる!?という緊迫する設定なのに、かなりの頻度で爆笑。人気揚げパン屋の女将が危険に直面し、秘めた能力をうっかり発揮してからはスクリーンに目が釘付け。各キャラの関係性や背景も綿密に構築してあり、過去の因縁の絡ませ方なども韓流らしく巧み。何よりも、オム・ジョンファのおばちゃんぶりが素晴らしい! 巨大サンバイザーで素顔を隠し、即興で敵を鮮やかに仕留める姿はアンジェリーナ・ジョリーばりにかっこいい。どんな役も変幻自在なパク・ソンウンも掴みどころのない夫を好演。意外なカメオも登場するアンサンブル痛快作で、コロナ禍の陰鬱な気分を吹き飛ばしてくれた。
子どもは無邪気、では済まない不穏な冒頭から最後まで心中穏やかでいられないサイコホラーだ。両親の不仲と母親のメルトダウンがのしかかった幼い少年がイマジナリー・フレンドを作るのは防衛本能の一種と理解できるが、その親友ダニエルが暴走し始めるのが恐ろしい。ダニエルのカリスマ的魅力があれば違法行為OKとするメンタリティと、彼が体現するマチズモはまさに現代アメリカの闇に通じるものがある。寛容不足の社会で自分らしく生きるのは難しいが、ルークの心の揺れを見て、「個」を貫いて「孤独」を感じる覚悟も必要と思った。2世スターという肩書きは重荷だろうが、主演のM・ロビンス&P・シュワルツェネッガーが好演している。
好きな本や映画が同じで、感性の似たカップルの変化を丹念に描き、恋愛したことがある人なら納得なポイント満載。恋を自覚したばかりのドキドキ、想いが通じてラブmaxへと至る心境、就職という現実によって感じ始めるズレからの小さなイライラ……。坂元裕二の脚本が恋のツボを的確に押す。恋愛当事者のさまざまに変わりゆく心もようを見事に描写していて、説得力あり。特に別れる時の男女の対応の差がリアル! 有村架純と菅田将暉が演じる等身大カップルは、最後まで見届けたくなる好感度の高さだ。永遠と思っていた恋愛感情や情熱は実は徐々に薄れるわけで、それをいつかは枯れてしまう花束に例えたタイトルがまた素敵だ。
ゲイのカップルと親世代のギャップがユーモラスに綴られ、ハッピーな気持ちになれる佳作。帰省した息子アントニオに男性の婚約者パオロを紹介された両親の反応が真逆で、カミングアウト問題が霞む騒動に発展するのが面白い。リベラルに見えて保守的な夫にキレたマンマは、当人そっちのけで盛大な結婚式の準備をガンガン進め、夫婦関係は一触即発。カップル破局を目論むアントニオの元恋人や女装マニアのおじさん、聖人フランチェスコのような修道士らも絡んで同性婚に対するさまざまな思いが噴出する! くだらない偏見を捨て、旧弊な価値観をちょいと改めれば多様性を受け入れることができるし、人間はもう少し幸せになれるんじゃないかな。
ディケンズの自伝的作品がモンティ・パイソン風なコメディに! 主人公デイヴィッドを取り巻くのは、エキセントリックな叔母や借金漬けだが楽天家の里親、野心家の事務員など風変わりな人物ばかり。次に何が起こるの?とワクワクさせる。ドタバタ喜劇的な要素を巧みに繋ぎながらも原作を損ねていないあたりが、コメディの鬼才A・イヌアッチ監督のセンスだろう。児童搾取や階級差が生む弊害といった暗い部分にも洒落が随所に忍ばせられていて、ユーモラスだ。また数奇な運命を経て作家になる青年役をD・パテルが演じていて、人種にこだわらずにキャラクターに最適な役者を当てる演劇的なキャスティングも非常に興味深い。