略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
ジーン・ケリー主演の映画も好きだが、バレエとミュージカルが合体した舞台はロマンティックさが際立つ。劇場では全体を見るのに必死だったが、映画だと編集のおかげで見るべきポイントが決まるし、さまざまなカメラワークやクローズアップで役者の表情演技まで手に取るようにわかるのがいい。主演のR・フェアチャイルドとL・コープは相性も良く、彼らのダンス&歌は見る側の気分を高揚させる。一番印象的だったのが、トニー賞を受賞しているセット美術。プロジェクション活用で浮かび上がるパリの風景が印象派絵画を思わせ、まさに“芸術の都パリ”の雰囲気。クラシックな物語だけれど、新しい魅力もたっぷり。
芸術的なSFワールドを創造するのが得意なD・ヴィルヌーヴ監督の本領発揮で、惑星デューンを含む宇宙全体の世界観に圧倒される。惑星の風景や飛行機などのガジェット類、衣装や美術など見るべきものが多すぎて、一瞬たりとも気が抜けない! 監督の底知れぬ想像力と最新技術の融合のおかげで架空の世界とは思えないし、凝ったディテールをIMAXで楽しみたい作品だ。ポールを演じるT・シャラメはじめとする役者陣はキャラクターをしっかりと体現していて、特にダンカン役のJ・モモアと悪役(?)S・スカルスガルドが印象に残った。チャニを演じるゼンデイヤの活躍は続編まで持ち越しだが、ファン心をくすぐるクリフハンガーなり。
映画『MINAMATA』で再び注目されているユージン・スミスが50年~60年代に住んでいたロフトで録音&撮影した個人的なプロジェクトをまとめた作品。監督はスミスのキャリアや人となりに焦点を当てつつ、当時のNYのジャズ・ミュージシャンやアーティストのボヘミアン・ライフを巧みに甦らせている。夜な夜な繰り広げられたセッションを切り取ったスミスのモノクロ写真が実に生き生きとしていて、魅力的だ。息子やジャーナリストらの証言でスミスの意外な側面やエンタメ界の闇も明らかになるが、個人的に感動したのはセロニアス・モンクがビーバップのリズムに悩む若手にダンスでリズムを伝授した逸話。まさにクールの極み!
80代でも進化し続けるリドスコの才能にノックアウトされる人間ドラマだ。強姦事件を男女三人の視点で見つめながら、男性の所有物とされた女性の苦悩や「騎士はかくあるべし」という固定概念に縛られた男の哀れを炙り出す。強い女性を描いてきた監督がジェンダー・バイアスとは無縁なのもよくわかる。それにしても、戦闘での武勲を錦の御旗に出世や権力に取り憑かれていた騎士の実像が痛々しい。細部まで凝った美術や衣装、光の加減でくすんで見える風景はもちろん、終盤の迫力あふれる決闘シーンまでリアリティに満ちていて、14世紀末のフランスにいるような気分になる。男優陣がクズ男を熱演し、ヒロイン役のJ・カマーを盛り立てている。
社会に反抗するかのようなエキセントリック動画で人々を魅了したYouTuber集団が逆にシステムに飲み込まれそうになり葛藤する設定がわかりやすい。巨万の富が動く世界はやはり“大人”が仕切るわけで、サブカル的なアートを創造していると思い込んでいる若者は「いいね!」の魔力に抗えるかが試される。ネットいじめ的な描写もあるし、人気YouTuberたちがネットのモラルについて討論もする。とにかくSNSは、取扱注意ということがわかる。G・コッポラ監督が目配りしたSNSの負の部分はまさに今、アメリカ議会が取り上げたフェイスブックが抱える問題点とも重なっていて、タイムリーな作品だ。