ジャズ・ロフト (2015):映画短評
ジャズ・ロフト (2015)ライター2人の平均評価: 4.5
50年〜60年代NYのアートな雰囲気に酔いしれる
映画『MINAMATA』で再び注目されているユージン・スミスが50年〜60年代に住んでいたロフトで録音&撮影した個人的なプロジェクトをまとめた作品。監督はスミスのキャリアや人となりに焦点を当てつつ、当時のNYのジャズ・ミュージシャンやアーティストのボヘミアン・ライフを巧みに甦らせている。夜な夜な繰り広げられたセッションを切り取ったスミスのモノクロ写真が実に生き生きとしていて、魅力的だ。息子やジャーナリストらの証言でスミスの意外な側面やエンタメ界の闇も明らかになるが、個人的に感動したのはセロニアス・モンクがビーバップのリズムに悩む若手にダンスでリズムを伝授した逸話。まさにクールの極み!
水俣の前にニューヨークの片隅で
『MINAMATA』が70年代(晩年近く)のユージーン・スミスなら、こちらは1957年~65年。マンハッタン6番街821番地のボロい建物でオープンリールテープを回し、アンフェタミンを常用しながらジャズシーンを撮り続けた異才とその周辺が記録されている。
『LIFE』誌での活躍で名声は充分。なのに常時金欠(編集者とは喧嘩)のスミスのもとにはラリー・クラーク、ノーマン・メイラーにダリまで訪れる。セロニアス・モンクはタウンホールの前にここでピアノを弾いていた。沖縄戦の件も描かれるが、反骨の報道写真家の魂はこの時、「街の音」と演奏がブレンドされるストリート(現場)に居たのだ。隅から隅まで貴重で震える!