山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

« Prev 全1,179件中56~60件を表示しています。 Next »
  • レリック −遺物−
    老後が現実になってきた世代に勧めたいホラー
    ★★★★★

    歳を重ねるにつれ「もしも認知症になったら?」という恐怖が身近に感じられるようになるが、治療不可の症状をホラーに発展させたN・E・ジェームズ監督の発想力に恐れ入った。認知症である老母エドナが感じる恐怖と振り回される娘や孫の困惑は非常に現実的で、彼らが体験する異常事態と対照的だ。アンバランスさが見るものに不安感を与える。「何が起こっているの?」とスクリーンから目が離せなくなり、ひねりの効いたエンディングまで恐怖の物語にどっぷり浸る。エドナ役のR・ネビンの演技がとてもリアルで、老母の混乱と不安定さが切ない。観賞後の余韻も深く、老後が現実になってきた世代に勧めたい。

  • ジュゼップ 戦場の画家
    誰もが他者の痛みを思いやれたらいいのに
    ★★★★

    祖国を追われ、メキシコ経由でニューヨークにたどり着いたスペイン人画家ジュゼップ・バルトリの波乱万丈の半生に驚く。なかでもショッキングなのがスペイン内戦後にフランスの強制収容所で受けた残酷な仕打ち。人を人とも思わぬフランス人憲兵の言動が現代社会でも飛び交う難民に対する差別的なフェイク・ニュースを彷彿させ、祖国を失うことの哀しみが増す。正気を保つために筆を走らせた画家のスケッチを生かしたアニメ画はときに残虐性も感じさせるが、それはきっと苦い過去を忘れてはいけないという監督のメッセージ。画家の実話に加えた創造部分は人間が失ってはいけない思いやりを伝えていて、優しいラストへつながる。

  • カウラは忘れない
    戦争体験者の肉声から伝わる反戦の思い
    ★★★★★

    オーストトラリアの捕虜収容所で起きた脱走事件を題材にしたドキュメンタリーから浮かび上がるのは、日本人的な同調圧力の負の面。「生きて虜囚の辱めを受けず」と叩き込まれた兵士たちが捕虜となるや偽名を名乗り、家族が村八分にならないように心を砕く。捕虜=死なのだ。恐ろしい。「天国だった」と元捕虜が回想する収容所生活で芽生えた生への執着と、脱走の真意の矛盾やいかに? 当人にしかわからないメンタリティであり、生存者が抱える悔恨も浮かび上がる。究極の選択に疑問に抱きながらも元捕虜の思いを理解しようとする女子高生の優しさが心に染みる。語り継がれるべき歴史に焦点を当てた監督は、きな臭い現代に警鐘を鳴らしている。

  • 映画 太陽の子
    物理学者のジレンマが伝わる青春群像ドラマ
    ★★★★

    海軍に原子爆弾開発を命じられた京都帝国大学の研究者たちを通し、戦争が人々にもたらす悲哀と虚しさを描いた実直な作品だ。最先端の技術開発に意欲を燃やす知的な若者たちが学問を人殺しの道具にすることに葛藤し、科学の役目を自問する姿がリアル。一方で国に命を差し出す覚悟を決める研究者の熱い思いや主人公兄弟と幼馴染の淡い恋も描かれ、戦争に巻き込まれた若者の等身大の姿がみずみずしくも切ない。自死した三浦春馬が演じる若き戦闘機乗りの登場シーンは涙なくしては見られなかった。彼と柳楽優弥が演じる研究者の母親役の田中裕子がまた肝っ玉の座った母性を見事に演じ、さすがのシーン・スティーラーぶりを発揮する。

  • 元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件
    元カレとは再会すらも避けたい女性、必見?
    ★★★★★

    元恋人のサラとジャクソンが乗った飛行機が舞台のワンシチュエーションもので、次々に降りかかる危機を主人公たちがどのように乗り越えていくかがポイント。二人が力を合わせて危機を回避し、ステージをクリアするごとにかつての情熱が蘇る仕組みなのだと思う。が、サバイバルできるか否かという大問題を前にした観客にとって、やけぼっくいに火がつこうがつくまいがどうでもいいというのが正直な感想。こういう設定では、愛する人のために自己犠牲を迫られるという究極の状況に置かれることが必要だったかも。製作陣が『ラスト・バケーション』チームなので、最後に登場する大きな影に過剰に期待してしまいました。

« Prev 全1,179件中56~60件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク