略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。
近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。
夏季五輪の合間に行われる同性愛者を対象としたスポーツ大会、その名もゲイゲームズ! 同大会出場を目指す水球チームと監督の友情と成長を描くスポ根ものは、考えさせられる快作だ。主人公がゲイの水球チーム監督に就任するのがアンチ同性愛者発言への懲戒という点はモヤモヤするが、個性豊かなメンバーの影響で考え方を変えていく展開にはやはり「そうだ」と膝を打つ。勝ちよりも映えにこだわる選手の描写やモチベーションの差など笑える部分もある。娯楽性を追求しながらも、LGBTQ+が置かれた状況などを丁寧に描いていて、メッセージ性も高い。見終わった時、香港で行われる2022ゲイゲームのTV放映を期待した。無理?
中国の若き辣腕探偵チン・フォンとその叔父が殺人容疑をかけられた日本人ヤクザの依頼で密室殺人の謎に挑む! 人気シリーズの第3弾なので探偵コンビの過去や謎めいた集団が絡んでタンの捜査が複雑化し、気が抜けない展開。妻夫木聡や長澤まさみら人気役者を多数揃えた豪華キャスティングだし、渋谷交差点やマリオカートも登場とあって観光誘致のお・も・て・な・し企画の体だ。叔父役ワン・バオチャンがお得意のアクションも披露する。しかもリウ・ハオランはじめ、中国の新世代役者が多数出演していて、華流ファン必見。シリーズ第4弾にはビッグな香港スターも登場しそうで、シリーズを追いかけたいい気持ちも高まる。
ご老人が新聞広告に応募して、スパイに採用される。あり得ない設定だが、老人ホームの虐待疑惑調査なので見る方も納得。応募してきた高齢者がスマホを使いこなせずに落ちるあたりはリアルだ。見事、合格してスパイとなったセルヒオの動向を追いながら、老人が直面する孤独や人間関係、認知能力の衰えなどを浮かび上がらせる監督の手法に感じ入った。人生の終盤を迎えた人々の肉声であり、入居者の日常も他人事とは思えず。一方、セルヒオに恋心を抱く老女も登場し、監督の計算を超えた展開になるのも微笑ましい。スパイだから目立っちゃダメなのに、ホームの人気者になる紳士セルヒオの温かさと人間力が本作をより魅力的にしている。
学歴が人生を左右する90年代の韓国社会で、負け犬感がある高卒OLに焦点を当てた痛快作。国際化に向けて突っ走る時代なので英語力を武器にと意気込むヒロインたちだけど、現実とのギャップがおかしくも切ない。だからこそ男尊女卑的な待遇やセクハラに耐えながら、「おかしい」と思ったことを正そうと頑張るヒロインたちに勇気をもらえる。汚染水垂れ流し問題に絡む黒幕探しも二転三転するプロットで楽しませるし、ネットワーク力を発揮する高卒OLたちが本当に痛快。90年代に起きた汚染水問題をエンタメ作に仕上げる韓流パワーに脱帽だ。キャラの個性を伝える衣装や時代感あふれる美術など非常に丁寧な作り方。
ゴジラのリブート第3弾だが、コングに主演の座を奪われた感じ。コングがサイズも知性も急成長していて、びっくり。一方のゴジラはリブート版では人類に敵意を抱いていなかったはずなのに、今回は香港を破壊したりと攻撃的。キャラ変が激しすぎて、理解に苦しむ。コングを際立たせるためとしか思えず、前作でゴジラに救われた少女マディソンの思いも空回り。残念だ。アメリカ人がコングを贔屓にするのはわかるけど、ゴジラ誕生の概念を無視したオリジン・ストーリーはいかがなものか? ゴジラってアメリカ人にとっては結局、外様キャラってわけ? もちろん特撮やハードなバトルは見応えありだし、あれこれ突っ込みながら見るのは楽しい。