山縣みどり

山縣みどり

略歴: 雑誌編集者からフリーに転身。インタビューや映画評を中心にファッション&ゴシップまで幅広く執筆。

近況: 最近、役者名を誤表記する失敗が続き、猛省しています。配給会社様や読者様からの指摘を受けるまで気づかない不始末ぶりで、本当に申し訳ありません。

山縣みどり さんの映画短評

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  • 犬は歌わない
    もしも犬が話せたら、NOと吠えたと思う
    ★★★★★

    前澤友作氏やジェフ・ベゾスらセレブが宇宙飛行を目指しているが、人間に先んじたのは野良犬ライカ。選ばれし野良犬にまつわる物語なども作られ、彼女にはエリート犬のイメージもある。しかし宇宙開発計画のアーカイブ映像を見る限り、被験犬の哀れなこと!?  もしも犬が話せたら、「やめて!」と懇願したに違いない。人間の野望の犠牲になったとしか思えず、犬からしたら人間なんて友だちじゃねーよと思ってそう。そして、現代ロシアの街角で生きる野良犬の生活も過酷そのもの。街角では狩れる獲物が限られているとはいえ、「ええっ」と驚愕のシーンあり。宇宙でもストリートでも野良犬は辛いよ! 

  • ベル・エポックでもう一度
    消えかかった愛は再び燃え上がるのか?
    ★★★★★

    後ろ向きすぎて妻から追い出されたビクターがある体験で活力を取り戻すまでをコミカルに描く大人のラブコメ。体験型エンタメ(?)で“人生がもっとも輝いていた”時代を追体験し、若き日の妻を演じる女優マーゴと絆を培うビクターを演じるD・オートゥイユが実にチャーミング。妻役のF・アルダンは相変わらずコケティッシュで、素敵だ。ビクターの変化が周囲を変えるのはお約束だが、消えかかった愛を再燃させるのは難しいと懐疑的にならずにはいられない。一方、依存度が高いエンタメのせいでビクターの勤労意欲が上がる展開や凝り性のクリエイターと女優の関係性、妻の愛のない浮気にはニヤリ。フランス映画好きにはたまらないはず。

  • 漁港の肉子ちゃん
    こんなおかん、暑苦しいけどそばにいて欲しい
    ★★★★★

    ダメンズ好きな母親としっかり者の娘の物語で、母娘を取り巻く人々も含めてしっかりとキャラクターが練られている。さまざまな悩みを吹き飛ばすパワーと母性を持つ肉子は身近にいたら暑苦しいだろうけど、人間性はとにかく素晴らしい。絵柄のコミカルさと演じる大竹しのぶの愛らしさが不思議にマッチする。そして小学生の娘キクコがまた素敵だ。クラス内のパワーバランスに悩んだり、風変わりな少年に抱く初恋めいた感情は既視感ありで「うんうん」とうなずいてしまった。実は心の奥に重石を抱えている複雑な子供大人であり、切なさもあるキクコの声優を務めたCocomiが実に達者で、今後の活躍に期待したい!

  • Mr.ノーバディ
    新たなアクション親父が誕生?
    ★★★★

    愛する家族に危険が及んだ場合、家長はどうすべきか? 『96時間』の主人公のように腕に覚えアリだったらいいなと妄想する人は少なくなく、本作もそのファンタジーを叶えるアクションだ。ただし主人公が平凡に見えるというのがポイント。判子で押したような人生を送るハッチはある事件をきっかけに隠していたスキルと欲望を一気に爆発させ、雪だるま式に危険が膨らんでしまう。『ジョン・ウィック』脚本家らしい流れで、クライマックスの乱闘シーンは荘厳なオペラ調。コメディ演技が得意なB・オデンカークが意外にも体を張ったクールなアクション演技を披露し、新境地を開拓。60代でアクション開眼したL・ニーソンに続くかも。

  • クローブヒッチ・キラー
    欲望を抑えすぎると過剰反応してしまうのかも?
    ★★★★

    教会に通う清く正しいボーイスカウトの心に芽生えた疑念が彼の人生を大きく変えてしまう。連続殺人事件の謎解きと思春期の少年少女の自分探しをミックスさせた展開で、平穏なはずの田舎町に潜む危険が浮き彫りにされる。監督は、アメリカ人が持つ清教徒的な道徳観の暗部をさらけ出したかったのかもしれない。犯人は早い段階でわかってしまうので驚きはないが、犯罪を暴いた側の選択と犯罪者の処遇がシニカルで興味深い。本作が長編デビューのD・スカイルズ監督の手堅い演出と役者陣の好演でキラリと光る作品となった。父親を演じるD・マクダーモットの自撮り場面は忘れ難い。

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