Mr.ノーバディ (2020):映画短評
Mr.ノーバディ (2020)ライター6人の平均評価: 4.2
新たなアクション親父が誕生?
愛する家族に危険が及んだ場合、家長はどうすべきか? 『96時間』の主人公のように腕に覚えアリだったらいいなと妄想する人は少なくなく、本作もそのファンタジーを叶えるアクションだ。ただし主人公が平凡に見えるというのがポイント。判子で押したような人生を送るハッチはある事件をきっかけに隠していたスキルと欲望を一気に爆発させ、雪だるま式に危険が膨らんでしまう。『ジョン・ウィック』脚本家らしい流れで、クライマックスの乱闘シーンは荘厳なオペラ調。コメディ演技が得意なB・オデンカークが意外にも体を張ったクールなアクション演技を披露し、新境地を開拓。60代でアクション開眼したL・ニーソンに続くかも。
パパは殺人マシーン
今やシリーズとしての面白さがついてきた『ジョン・ウィック』だが、その脚本家のデレク・コルスタッドらしい二匹目のドジョウ感が全開。「舐めてた相手が、じつは最凶」という擦られた設定のもと、かなりぺラペラな話が展開されるなか、ロシアン・マフィアの描写に関しては、ほぼ変わらないといった感じだ。とはいえ、やっぱりアクションシークエンスに関しては、香港&韓国ノワールの要素もしっかり取り入れるなど、かなりの本気度が伺える。確実にアガるパット・ベネターの「ハート・ブレイカー」が流れるカーチェイスやら、やっぱり暴れるジジイ役のクリストファー・ロイドの使い方などに助けられた感もアリ。
アクション映画のカタルシス、こうあるべきという至福のひととき
自分を「ノーバディ=何者でもない」と称しつつ、明らかにヤバいことしてきたような主人公。そんな冒頭から、サエない中年男がヒーローに変貌する展開を想像させるが、その想像を軽く上回るハード&ドラマチックな瞬間が何度も用意され、アクション映画の純粋な興奮に浸らせる“超拾いモノ”的快作。
日々のルーティンをきっちりこなし、家庭では理想の父親。テンポよく進む日常が、そのまま映画全体のスピードとノリを支配する。えげつないほど泥臭く、激しいシークエンスには、主人公の能力と、年齢による衰えが絶妙に計算され、ブラックなギャグ、脱力する余裕、驚きの作戦、そして名作へのオマージュと、あらゆる要素が過不足なく絡み合う!
ダメ親父から闘士へ、その瞬発力に燃える!
一件何者でもない一般人が、実はただ者ではなかった……という設定だけで映画は面白くなるもの。冒頭にその凡人ぶりを強調した分、本作は瞬発力に優れる快作となった。
主人公の家庭人設定は『96時間』を連想させるが、こちらの方がよりダメ親父感が強い。ゴミ出しも満足にできない庶民性が味。だからこそ、隠していた彼のスキルが発揮されるほど、どんどん夢中にさせられる。
『ハードコア』で全編主観映像を貫いたナイシュラー監督が、ここでは『デットプール2』のプロデューサーの下でワンカットやスローモーションなど多彩なアクション技巧を発揮。自身の体験に基づくストーリーを提供した、主演オデンカークの頑張りも光る。
絶妙な配役
これはいわゆる「舐めていた相手が殺人マシーンでした」系の映画です。
が、しかし、過去にあった同系統の作品と比べて主演にボブ・オデンカークをキャスティングしてきたことで、新鮮な映画になりました。
それぐらい序盤のオデンカークのハッチはどこにでもいる中年男性にしか見えませんでした。
やりようによっては既視感のあるジャンルでもこんなに新鮮になるんだと感心してしまいました。
『ジョン・ウィック』のチームと言うこともあってアクションシーンは安心して見ることができます。
クリストファー・ロイドが元気いっぱいなのも嬉しかったです。
主人公と一緒に暴れまくって気分はスッキリ!
暴れまくるのは、気持ちがいい。気に入らないものを殴りまくり、破壊しまくると、スカッとする。そんな大きな声では言いにくい原始的動物的な快感を、徹底的に追求してくれるのがこの映画。主人公と一緒に暴れまくって、気持ちよくストレス発散出来る。一応、言い訳はあるが、主人公の行動の動機も似たようなもの。さらにこの快楽は年齢には関係なく、事件に巻き込まれる主人公の老いた父親も、大きな銃を構えながら「隠居の味もいいが、コレが忘れられなくてなあ」と心の底から嬉しそうな顔をする。そんな暴力全開の中、暴れる前に壁の「無事故日数」表示を「0」にするなど、ちょっとしたギャグがちょいちょい繰り出されるのもいい感じ。