中山 治美

中山 治美

略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。全国商工新聞、月刊スカパー!(ぴあ)、時事通信などに執筆中。

近況: 映画祭で国内外を飛び回っているうちに”乗り鉄”であることに気づき、全国商工新聞で「乗りテツおはるの全国漫遊記」を連載。旅ブログ(ちょこっと映画)もぼちぼち書いてます。

サイト: https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

中山 治美 さんの映画短評

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  • エキストラ・バージン ~世界一のオリーブオイル~
    地方振興のヒントも! 一大オリーブオイル生産地の挑戦
    ★★★★★

    年齢を重ねると口が肥えてくるものだが、初日に摘んだオリーブのみを絞ったオリーブオイルを初めて味わった時は衝撃的だった。色は緑。口に含むとフレッシュな果実の香りと味が広がり、料理の味がアップするだけでなく、そのまま呑める。それが本作に登場するスペイン・ハエン県のオリーブオイルだった。この早摘みのオイルは、スペインでは常識の味だったのかと思いきや伝統と風習を打破する挑戦だったことを本作で知る。ただ作品としては盛り込み過ぎ+構成に難あり。味が伝わりにくいのも歯痒い。しかし土地の歴史から丁寧に紐解いている点は興味深く、改めてオリーブオイルと公衆浴場を広めたローマ帝国の偉大さを実感するのであった。

  • ゆうやけ子どもクラブ!
    教育の本来あるべき姿を写し出す
    ★★★★

    相模原殺傷事件や生産性に人間の価値を求めることを平然と言ってしまう政治家が出現したことへの怒りか。伊勢真一監督『えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤滋』など障害をテーマにした作品が目立つ。見つめるのは彼らの個性。その魅力を開花させている人たちを本作は追う。遊びなどを通して彼らの行動に寄り添い、内面世界を観察し、得意分野を羽ばたかせる。人を育てる教育とは、本来こうあるべきなのではないかと考えさせられる。しかしご多分に漏れず、今の日本は真摯に活動している人たちが報われる社会ではない。法改正により施設存続の危機も描かれる。この場がいかに重要か。撮影を快諾した施設利用者たちの切なる思いが滲み出ている。

  • 決算!忠臣蔵
    金がなくては戦が出来ぬ
    ★★★★

    昨今の松竹お得意の『武士の家計簿』、『殿、利息でござる!』に続くお金で歴史を再検証するシリーズ。しかも今回は何度も映像化された忠臣蔵だ。もう掘り起こすことも、目新しさもないだろうと思いきや、そういうことか!の連続でさらに歴史に深く触れることができることウケアイ。少なくとも、今や赤穂の観光名所になっている大石内蔵助邸宅跡が何故にあんなに立派か。その謎も解けるだろう。そして討ち入りの日が、あと数ヶ月延びていたら……と歴史の「もしも」を考えずにはいられない。ただ当時の価格を分かりやすくするために字幕多しで、表現方法は他になかったかと思う部分はある。そこは次の課題で。

  • 虹色の朝が来るまで
    美しき2人の世界にうっとり
    ★★★★★

    同性愛は日本でも認知されつつあるが、それでも恋のトキメキも戸惑いも、公表するか否かの葛藤も、個人的な問題は永遠に尽きない。加えて本作のカップルはろう者だ。小さなコミュニティの中で、セクシャルマイノリティーの恋の行方は? 日本語字幕はあるがあくまで聴者向け。2人がろう者のLGBTQイベントに初めて参加した時、出身地を聞かれて嘘をつくシーンなど、手話やろうコミュニティが分かるとより状況が理解できるのだろうと、歯痒く思う部分もある。それでも2人の真っ直ぐな芝居が多くの情報を伝えてくれるので無問題。何より純粋な愛は、様々なバリアを乗り越え、忘れさせてくれるのだということを改めて。心洗われる1本。

  • スペインは呼んでいる
    スペイン+マイケル・ナイマン……まさかのマリアージュ
    ★★★★

    『イタリアは呼んでいる』に続いて、2人の与太話とモノマネ合戦で旅の情報が全く頭に入ってこない新種のロードムービーだ。しかしスペインの広大さと歴史を色濃く映すバスクからアンダルシアに南下する縦断ルートで、写っている映像の情報量は豊富。さらに、バッグに流れる音楽は、M・ウィンターボトム監督の傑作『ひかりのまち』でも使用されたマイケル・ナイマンのナンバーで、ドラマチックな旅となることを予感させる。悪ふざけの合間に明らかになる仕事、家庭、恋etc…。眩しい太陽の下で惑う彼らの姿にままならぬ人生を想うと同時に、完全にシリーズ化を見越したウィンターボトム監督の巧妙な仕掛けの数々に職人技を見るのであった。

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