略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。全国商工新聞、月刊スカパー!(ぴあ)、時事通信などに執筆中。
近況: 映画祭で国内外を飛び回っているうちに”乗り鉄”であることに気づき、全国商工新聞で「乗りテツおはるの全国漫遊記」を連載。旅ブログ(ちょこっと映画)もぼちぼち書いてます。
園子温監督『アンチポルノ』では筒井真理子の抜群のスタイルと肝の太さに驚愕。
本作ではさらに艶と狂気も加わって、微笑みの裏の魔性ぶりに目眩すら覚えた。
作品のテイストも相まって『エル ELLE』のI・ユペールを彷彿。
『淵に立つ』でも組んだ深田監督が、筒井に刺激を受けて脚本をしたため、さらに演出でどこまで要望に応えてくれるのかを挑んでみたくなったのも納得だ。
そして本作には時流に敏感な深田監督らしく、昨今のメディア批判も含まれている。
1つの事件に群がり、人の一面しか見ずに善悪を判断して報じる事の何と無責任な事か。
人間がいかに多面性を持っているかを、筒井の存在そのもので証明しているのだ。
2大セクシーハゲの競演に、心踊らない映画ファンはいないだろう。
ただスピンオフとはいえ”ワイスピ”だ。
『トランスポーター』のようなドライビング・テクで痺れさせてくれるカーアクションを期待したが、
アラフィフにして現役の彼らの魅力を際立たせるべく接近戦に力が入ってしまったのはご愛嬌。
しかしJ・ステイサムは『エクスペンダブルス』、V・カービーは『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』に出演したばかりと、
脳内のアクション映画人物相関図は大混乱。
そんな中でワイスピを考えると、やはりポール・ウォーカーが亡くなった時点でシリーズを終了すべきだったのでは?という思いを強くした。
単純な着想から物語にし、予想通りのドタバタ劇で押し切った前作。
ヒットが背中を押したのか、同じ製作陣とは思えぬ濃密な内容と大胆な飛躍に驚き。
とりわけ冒頭。
1から2へと至る飼い主の人生を省略する思い切りの良さは『カールじいさんの空飛ぶ家』を彷彿。
舞台もN.Y.から広がり、作品にダイナミックさが生まれた。
マックスの行動範囲を広げる布石となるのが、旅行先で出会う農場犬ルースターとの出会い。
マックスに外で生きるルールと術、犬としての誇りと勇気を与える。
これは流行の”ペット見守りカメラ”でも窺い知ることのできない彼らだけの掟と友情。
改めて世界は我々だけのものではないことを教えてくれるのだ。
これまでも慰安婦問題を扱った作品が公開されてきたが、『主戦場』前後では我々の受け取り方が大きく変わったのではないだろうか。
しかも、本作で取材したのは中国・山西省の農村。そこに慰安所はなかったという。
女性たちは強制連行され、民家や日本軍駐屯所で長期間監禁され、性奴隷にされた。
タイトルは、当時の彼女たちの心の叫びを表している。
老いた彼女たちの顔や手に刻まれた深いシワには、
キズモノにされた事で婚姻に恵まれず、苦労して生きてきたことを言葉以上に物語っている。
少なくとも本作で被害を語る彼女たちの表情を見れば、「売春婦」とか「捏造」という言葉の暴力を易々と浴びせることはできないはずだ。
自家製風力発電と水揚げポンプを開発し、村の農業を救った少年の話だ。
だが脚本も手がけたキウェテル・イジョフォー監督は、長編デビュー作ながらなかなかの英断をしている。
タイトルの風をつかまえるのは最後の最後で、情感を煽る安っぽいお涙頂戴も排除。
注力したのは少年を駆り立てた貧困国の厳しい現状を世に知らしめることであり、
とりわけ教育への不理解が、多くの可能性を芽を摘んでいることを訴えている。
欧米ではキウェテルをはじめとする黒人俳優の活躍が増えているが、
その結果が、恐らく今までならなかなか企画が通りづらかったであろう作品を生み出すことに繋がっている。
映画界における多様性。面白くなってきた。