ワイルド・スピード/スーパーコンボ (2019):映画短評
ワイルド・スピード/スーパーコンボ (2019)ライター6人の平均評価: 3.2
番外編でも”ファミリー”のトーンにブレなし
“ワイスピ”ファミリーの犬猿マッチョ・コンビを主人公に据え、シリーズの持ち味であるスピードを活かしつつ、力技を盛り込む。そんなコンセプトが活きた豪快アクション。
豪放磊落な米国代表ロック様と切れ味鋭い英国代表ステイサムのコンビネーションは抜群で、ときに噛み合わなさからくる笑いを、ときに噛み合ったアクションの興奮を提供。ユーモアとスリルのバランスがとれ、とにかく目が離せない。
シリーズの他のメンツが出てこないことを踏まえれば、これはスピンオフ。とはいえシリーズの脚本家クリス・モーガンによるシナリオはトーンを崩さず、きっちりシリーズとは別の”ファミリー”のドラマに帰結。やはりグっとくる!
シリーズを終える勇気も必要だ
2大セクシーハゲの競演に、心踊らない映画ファンはいないだろう。
ただスピンオフとはいえ”ワイスピ”だ。
『トランスポーター』のようなドライビング・テクで痺れさせてくれるカーアクションを期待したが、
アラフィフにして現役の彼らの魅力を際立たせるべく接近戦に力が入ってしまったのはご愛嬌。
しかしJ・ステイサムは『エクスペンダブルス』、V・カービーは『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』に出演したばかりと、
脳内のアクション映画人物相関図は大混乱。
そんな中でワイスピを考えると、やはりポール・ウォーカーが亡くなった時点でシリーズを終了すべきだったのでは?という思いを強くした。
『ワイスピ』好きほど困惑するスピンオフ
LAのホブス、ロンドンのショウの日常を2画面で描くオープニングから、本シリーズと別モノを強調。とはいえ、対立関係から共闘体制を結ぶ2人とその妹の関係性を観れば、ブライアンとドム、ミアの姿が重なるのは当然だ。そんななか、デヴィッド・リーチ監督の生真面目さが『デッドプール2』以上に出たか、3人のキャラが面白いように転がらない。しかも、サプライズなカメオはいても、シリーズ定番の予告以上なサプライズ展開にならないうえ、長尺であることから、予定調和を楽しむ既視感あるアクション映画になってしまった。長年『ワイスピ』シリーズを溺愛してきたファンほど、困惑してしまうスピンオフである。
人気シリーズが新たなフェーズに突入?
人気シリーズのスピンオフには、本家のファンも大満足なカー(バイク)アクションと華麗でパワフルな殴り合いが詰まっていて、新たなフェーズ突入の予感大。D・リーチ監督は格闘シーンに重きを置いていて、役者の動きがしっかりとわかるスローモーな技闘は実に見応えあり! もちろんI・エルバが演じる悪役はAI搭載のメタヒューマンだし、ロック様はヘリコプターと綱引きまでするわけで、冷静に考えるとかなりバカバカしい。でもこういう映画は「考えるな、感じろ」ってやつです。そしてリーチ監督がらみの大物俳優のカメオ出演に爆笑。口八丁の役者二人はさらなるスピンオフにも続投するのか気になります。
シリーズの精神に、両トップがガチバトル色を濃厚に注入
超高層ビルからの急降下に始まる、ロンドン市街地での壮大カーアクションで、本シリーズの真骨頂を堪能。改造人間キャラ、イドリス・エルバのバイクの超人的鮮やかさは、ため息もの。ドウェイン、ステイサムの肉体派が2トップなので、これまでのシリーズよりもガチ筋肉バトル色が濃厚という印象。サモアのシーンにその特徴が際立ち、本流と区別するスピンオフの使命が感じられた。ただ、アクション以外、とくに2人の意地の張り合いや、周囲との掛け合いなど、ユルさで笑いをとる演出がうまく機能せず、単に冗長になってるような…。そしてハリウッド製のフィクションとはいえ、あの場所で大爆発を起こす無神経さには、やはり違和感がある。
ヴァネッサ・カービーもカッコいい!
原題にはない日本版のサブタイトルがサイコー。そのスーパーなコンボとは、シリーズの人気サブキャラ、ドウェイン・ジョンソン演じるホブスと、ジェイソン・ステイサム扮するショウのこと。サブキャラの魅力を最大限に引き出しつつ、この2人を激突させて新たな面白さをプラス。そのうえ従来の魅力のトンデモな過激カーアクションは活かす、最新型はこうでなくちゃ、な1作。
新キャラ役のヴァネッサ・カービーはTV「ザ・クラウン」「ミッション:インポッシブル/ホールアウト」に本作と話題作が続いて、DCの新「バットマン」のキャットウーマン役の噂も。それも本作のシャープでキュートな活躍ぶりを見ると納得。