中山 治美

中山 治美

略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。全国商工新聞、月刊スカパー!(ぴあ)、時事通信などに執筆中。

近況: 映画祭で国内外を飛び回っているうちに”乗り鉄”であることに気づき、全国商工新聞で「乗りテツおはるの全国漫遊記」を連載。旅ブログ(ちょこっと映画)もぼちぼち書いてます。

サイト: https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

中山 治美 さんの映画短評

« Prev 全482件中96~100件を表示しています。 Next »
  • 原発事故の影響で避難指示地域は徐々に解除され、国は復興五輪に躍起だ。だが現実を、2人のフォトジャーナリストが突きつける。前作『遺言 ~原発さえなければ(全五章)』に続きメーンとなるのは元酪農家で、地域のリーダーとして国内外に飯館の現状を訴え続けてきた長谷川健一さん。本シリーズ恒例の酒を交えての夕食で、チェルノブイリで未来の飯館の姿を見た長谷川さんの本音が明かされる。その消沈ぶりはなかなかにして衝撃的だ。そして帰還率の低さは村という共同体を再構築することの難しさも写し出す。私たちの社会は、どれだけ棄民を増やすのか。”この惑星の東京以外の場所は今年も明けてはいないようだ”(by 宇宙人ジョーンズ)

  • どこへ出しても恥かしい人
    心のビタミン、友川カズキ
    ★★★★

    友川のドキュメンタリー映画は『花々の過失』に続いて2作目。ライブと競輪と酒に明け暮れる日常を追った内容は重なる部分も多い。そうと分かっていても存在感に圧倒され、”ありのまま”の友川は裏切らない面白さがある。ただ油断していると、酔拳のごとく放たれる友川語録の数々に脳天を撃ち抜かれるから注意だ。中でも「人生何かに酔わなきゃ、突っ走れない」。友川の場合は競輪で熱中するものがあるからこそ日々を乗り切れるということだが、理不尽なことが堂々と政治の場でまかり通る今、酒でもゲームでも何かに酔ってなきゃやってらんないという意味にも取れる。深い。ちなみに本作の撮影は2010年。ブレずに生きる人の言葉は、強い。

  • 死霊魂
    執念と怒りのドキュメンタリー
    ★★★★★

    監督は度々、中国の反右派闘争をテーマに描く。創作意欲を掻き立てるのは何か? 監督の手持ちカメラによる映像が物語る。再教育収容所があったゴビ砂漠に、風雨にさらされ剥き出しになった人骨の夥しい数。劣悪な環境で病死や餓死した人たちだ。歴史的には彼らの名誉はのちに回復されたことになっているが、それがいかに気休めでしかないか。臭い物に蓋をし続けてきた権力者の横暴を丹念な取材で詳らかにする。監督の初長編劇映画『無言歌』を見た人なら、史実を忠実に再現した内容であることにも本作で気づくだろう。確かに8時間越えの上映時間は鑑賞に気合が必要だ。しかし世界が右翼化する中、監督からの警鐘と思えば時間を忘れること必至。

  • グリーン・ライ ~エコの嘘~
    グレタさん批判の構図がここに!
    ★★★★

    あたかも環境に配慮しているように装う”グリーンウォッシング”企業を監督が体当たり取材した、M・ムーア監督スタイルのドキュメンタリー。一見、ムーア監督ほどの過激さはないように見えるが、その道の専門家で企業への追及が手厳しいジャーナリストを同行し、したたかに当事者たちに接近しては真実を暴いていく。見えてくるのは、利益のためなら手段を選ばぬその姿勢。16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんを躍起になって批判する人に大物が多い理由が見えてくるようだ。監督も嫌気が差すほど同行ジャーナリストの商品チェックは厳しいが、無意識に消費を繰り返している我々に多くの気づきを与えてくれるに違いない。

  • 1917 命をかけた伝令
    「走れメロス」+『野火』
    ★★★★

    仲間の命を守る為、期限までに使命を全うするシンプルなストーリーは「走れメロス」。最新技術の粋を集めた主観的視点が中心のワンシーンワンカット風映像は、塚本晋也監督『野火』を彷彿とさせる。根底にあるのは今も身近にある戦争の脅威を実感できない世代に、強引にでも戦場を体感させたいとする思い。ただ『野火』と大きく違うのは、より臨場感を与えるのに重要な聴覚と臭覚が足りない。静寂の中どこからか弾丸が飛んでくる不吉な予感とか、仲間の遺体をグニャと踏んでしまったことの嫌な気持ちとか。そういうシーン自体はある。だが大音量の音楽が効果を半減させ、戦争がドラマチックになってしまったのが惜しい。

« Prev 全482件中96~100件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク