略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
サイコスリラーに謎解きの要素を絡め、人間の狂気をあぶり出す。この流れには強烈な吸引力が。
退行催眠という催眠療法がストーリー上、大きく機能する。目玉が不自然にグルグル回る漫画的な描写はリアリティを削ぐが、ショッキングであるという点では効果アリ。“あくまでエンタテインメントを目指した”と片岡監督は語るが、それも納得がいく。
で、肝心のタイトル。“誰のことを言っているのだろう?”という興味を引きつつ、ラストでは衝撃的にそれが明かされる。が、必ずしも答を限定しない描き方がなされているので、見終わった後にアレコレと考えてしまった。これは巧い。
『サイン』を見終わったときにも似た、シャマラン作品を連想させる観賞後の奇妙な感覚。ピールの前2作ほど、ホラーに寄った感はない。しかし不穏度は満点だ。
テレビのスタジオでサルが暴走する冒頭からして怪しく、さらに撮影所でのウマの暴走が続く。しかし、これらの動物より、さらに恐ろしいモノが空中にいた。主人公の兄妹は監視システムを駆使しながら、これと戦うことになるのだ。
興味深いのは“見る”ということにこだわっている点。本作では、あるものを“見る”ことが命取りとなる。それが何の暗喩かは観て考えてもらうとして、ピールのスリラー演出が別次元に達したことを評価したい。
目の不自由な女性を主人公にした、『暗くなるまで待って』の変奏バージョン。ヒロインが若く、未成熟で、犯罪をもためらわない点が面白い。
“誰も視覚障がい者を犯罪者とは思わない”とうそぶきつつ高級ワインをためらいなく盗もうとする主人公。そんな姿勢から、彼女のような人間に対する行き過ぎた憐みや、見下しといった社会の現実が見えてくる。
主人公が善人であって欲しい観客には、本作は受け付けられないかもしれない。が、強盗犯一味と攻防を繰り広げる彼女の行く末が気になり、最後まで目が離せない点がスリラーとしての妙。ヒロインの視覚をスマホカメラ越しにサポートする電話オペレーターとのかけ合いも面白い。
スーパーマンに愛犬がいて、彼と同様にスーパーパワーを持っていた……そんな設定に基づくDC印のアニメーション。
この犬を中心にして、図らずも特殊能力を得てしまった動物たちがドタバタの中で友情を育みつつ、同じくスーパーパワーを得た悪のモルモットに立ち向かう。DC作品で比較すると、『シャザム!』を、よりファミリー向けにした設定で、ファンタジー風味の冒険アクションが楽しめる。
スーパーマン以外のDCヒーローもズラリと登場。声優出演したD・ジョンソンが次のDCEU作品『ブラックアダム』で主演を務めることもあり、同作の予告的な要素も垣間見られるので、ファンはチェックしておきたい。
原作コミックのバトルの場面を、“ボリュメトリック”なるCGI技術で描写。『マトリックス』ばりのアクションに目を見張り、それだけでアクション好きとしては嬉しくなる。漫画的スタイルの正しき実写化。
しかし何より面白いのは、ヒロインがいかに“ヘンな娘”であるのかの再現だ。殺し屋というヤクザなバイトをこなしながらも、性格はポジティブ。心まで“負”に染まらない天真爛漫さが、橋本環奈の個性からあふれ出る。
他のキャラもインパクトが強く、それぞれ印象に残るが、最強の敵“みちたかくん”の不死身っぷりが味。原作とはイメージが異なるが、城田優が体現するターミネーターのような存在感は原作を突き抜けた。