この子は邪悪 (2022):映画短評
この子は邪悪 (2022)ライター4人の平均評価: 3.3
『ゲット・アウト』からの影響を感じさせるホラー・サスペンス
5年前に交通事故で大怪我を負った精神科医の一家。ただ一人だけ無傷だった長女は、罪の意識に苛まれている。そんなある日、事故以来ずっと昏睡状態だった母親が奇跡的に回復し、自宅へと戻ってくるのだが、しかし長女は目の前にいる母親が別人ではないかと疑い始める。ジョーダン・ピールの『ゲット・アウト』からの影響が濃厚な和製ホラー・サスペンス。漠然とした不穏な空気を終始漂わせつつ、謎と疑惑と恐怖をじっくりと醸成させていく演出はなかなか秀逸。どうしても二番煎じ感が否めないところは玉に瑕だし、よくよく考えると首をひねるような展開も少なくないが、タイトルの意味に合点がいくラストを含めて手堅い作品ではある。
ジョーダン・ピール監督の影響も
『ハッチング 孵化』ばりに終始不穏な空気が漂う、どこか歪んだ家族ドラマ。同じ「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM」受賞作『哀愁しんでれら』にも通じる、人間の狂気が描かれるが、『ノイズ』の脚本も手掛けた片岡翔監督だけに、タイトルの意味が明らかになるラストまで、先を読ませぬ展開を用意。膨大な数のウサギの描写など、ジョーダン・ピール監督作の影響もあり、ホラーというよりはネタバレ厳禁なサイコ・ミステリーといった仕上がりだ。堂々と座長を務める南沙良の凛とした魅力も、キラキラ映画でなく、あえて本作を選んだ大西流星の意気込みも感じるなか、いちばん美味しいのは玉木宏だったりする。
どの子が真の邪悪なのか!?
サイコスリラーに謎解きの要素を絡め、人間の狂気をあぶり出す。この流れには強烈な吸引力が。
退行催眠という催眠療法がストーリー上、大きく機能する。目玉が不自然にグルグル回る漫画的な描写はリアリティを削ぐが、ショッキングであるという点では効果アリ。“あくまでエンタテインメントを目指した”と片岡監督は語るが、それも納得がいく。
で、肝心のタイトル。“誰のことを言っているのだろう?”という興味を引きつつ、ラストでは衝撃的にそれが明かされる。が、必ずしも答を限定しない描き方がなされているので、見終わった後にアレコレと考えてしまった。これは巧い。
不穏な映画が、また一つ
また”TSUTAYA CREATORS' PROGRAM”から不穏でニヤリとさせる映画がやってきました。もうこの企画からは目が離せないですね。
片岡翔監督は最近は脚本家としてのイメージが強かったのですが、今作を見ればやはり監督しての活動も、もっとみたいですね。
キャスティングに関しては、これもまた巧くはめてきたもんだなと唸りました。明るい芝居、コメディ芝居もできる面々ですがこういう影のある陰キャでも頼もしいですね。
スリラーともヒューマンドラマとも言え、カテゴライズがとても難しい不思議な感触が残る一品でした。