略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
P・スフィーリス監督は『ウェインズ・ワールド』でブレイクする以前の1980年代、LAのインディーズシーンでパンクな青春映画を手がけていた。本作もそのひとつ。
冒頭で実在の連続殺人犯が紹介され、それらと並ぶ存在として主人公コンビの行動が描かれる。高校を卒業したばかりなのにノーフューチャーな彼らがどのように凶行に走るのか? 薄氷の上を歩くようなサスペンスを宿らせる、巧い導入部。
彼らの心情に寄り添うリアルな描写も秀逸。ゲイ差別に対する反感を盛り込んだポリティカル・コレクトネスは当時の作品には珍しい。イギー・ポップ“I Got Nothin’”がフィーチャーされる場面の切なさといったら!
ナックルズやテイルスら原作ゲームの人気キャラが新参入。クリーチャー対決となるだけに、アクションの点は明らかにスケールアップ。高速&縦横無尽のスペクタクルが繰り出され、目を奪われる。
ビジュアル的な賑やかさの一方で、前作ほどのドラマ性がないのは少々物足りない。前作でキャラ紹介は済んでいるぶん、結婚式のドタバタなどのギャグが増加。が、2時間以上の尺は冗長にも思える。
とはいえソニックの活躍は痛快だし、ナックルズの無双キャラも映画を面白くする。何より、ジム・キャリーのノリノリ悪役演技はますます快調。CGキャラと違和感なく並ぶ彼のスゴみもスケールアップの一要素だ。
今年公開の音楽ドキュメンタリーは豊作だが、この映画も切り口の面白さという点に味がある。
大のインタビュー嫌いであるブライアン・ウィルソンの本音を引き出すために、親友とドライブさせて、その際の会話をカメラに収める――監督によると、この手法は想像以上の効果を発揮したとのこと。とある場面で、ビーチ・ボーイズ時代のある曲を車で聴きながら、ひとり涙する彼の姿に、心をかき乱される観客は少なくないだろう。
天才アーティストの記録である一方で、心の病との格闘を続ける人間の苦渋と強靭さも、ブライアンの言葉から見えてくる。音楽ファン以外にも、ぜひ見て欲しい。
三木監督はデビッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』を引き合いに出して本作を語っているが、なるほどと思わせる。
ひと言で表わせば、シュール。序盤のコンビニでの事故以降、物語は非現実へと傾き、トイレの怪老人、過去の凄惨な事件、コンビニ店長の不審な行動など、多くの逸話は謎が明かされぬまま放置される。生死の解釈は観客次第。それを楽しめるか否かが、本作の評価を左右する。
面白いのは、男キャラはわかりやすいほどダサいか変人であるのに対して、女性キャラはチャーミングかつ官能的で、ビジュアル的に目を奪われること。これもまたリンチ作品を彷彿させる。
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』で注目された俊英の新作だが、製作を手がけたウォン・カーウァイの色も濃い。
自由で身勝手な男たちの傷心を、ロマンチシズムたっぷりに描いた点は、まさにそれ。二部構成というべき転調は『恋する惑星』『天使の涙』を彷彿させる。
映像も一見すると、カーウァイ作品の色彩や構図を手本にしているようにも見える。それでもスタイリッシュさより、エモさが際立つのはプーンピリヤ監督のセンスゆえか。グッとくる展開への運びが巧い。