コンビニエンス・ストーリー (2022):映画短評
コンビニエンス・ストーリー (2022)ライター3人の平均評価: 3.3
可笑しさと哀しさを醸し出す不条理ムービー
人里離れた山奥のコンビニに立ち寄った売れない脚本家が、ドリンクコーナーの向こうの異世界へと迷い込んでしまう。ミステリーと怪奇幻想とユーモアとペーソスが混然一体となった不条理ムービー。この生者と死者が行き交う摩訶不思議な物語では、現実と非現実の境界線がどこまでも曖昧で、数々の疑問にも明確な答えは用意されず、最後まで謎は謎のままに終わる。この「狐につままれた」ような感覚は、デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』などを彷彿とさせるが、恐らく三木聡監督の死生観も色濃く反映されているのではないかとも思う。可笑しさと哀しさを同時に醸し出す奇妙な味わいが魅力的だ。
海外受けしそうな難解ミステリ
『大怪獣のあとしまつ』に続く、三木聡監督の次回作は、さらに観客を惑わす問題作! 「熱海の捜査官」のテイストを継続した神話や民話も交錯した難解ミステリであり、タイトルから匂わすキャッチーさは皆無。しかも、『サンセット大通り』に始まるフィルム・ノワール調であることから、前田敦子がファム・ファタール化し、『バートン・フィンク』と化した成田凌を骨抜きにしていく。そんな異世界だけでなく、片山友希演じる女優・ジグザグが撮影している現実世界も終始不穏で、いろんな意味で逃げ道なし。アメリカ中西部風から温泉街へと変わる展開など、日本より海外受けしそうな予感大。
そのコンビニは、D・リンチ的な異界に通じる!?
三木監督はデビッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』を引き合いに出して本作を語っているが、なるほどと思わせる。
ひと言で表わせば、シュール。序盤のコンビニでの事故以降、物語は非現実へと傾き、トイレの怪老人、過去の凄惨な事件、コンビニ店長の不審な行動など、多くの逸話は謎が明かされぬまま放置される。生死の解釈は観客次第。それを楽しめるか否かが、本作の評価を左右する。
面白いのは、男キャラはわかりやすいほどダサいか変人であるのに対して、女性キャラはチャーミングかつ官能的で、ビジュアル的に目を奪われること。これもまたリンチ作品を彷彿させる。