略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
名門レコーディングスタジオを題材にしたドキュメンタリーがここ数年増えているが、本作の面白い点は“滞在型”というロックフィールドの特性に焦点を絞っていること。
そこでのレコーディングはバンド側には合宿のようなもので、若くて仲間意識が強いほど気持ちも高揚する。名曲や名盤が生まれた背景に、そんな“空気”の効果があったことは興味深い。
酒や麻薬、ケンカなどのヤンチャも含め、語られるエピソードはどれも面白く、青春群像劇の色も濃厚。ストーン・ローゼズやオアシスの破天荒さに笑い、ブー・ラドリーズの確執に無常を覚え、シャーラタンズの悲劇に泣く。青春は必ずしも良い思い出ばかりではない。
イスラエルとパレスチナの対立はニュース感覚では理解しているものの、肌感覚ではわかりづらい。それを当事者目線で浮き彫りにした点に、まず目を見張った。
テロの被害に遭った、親類を殺された……などなど、若者たちが語る体験は、かの地の現実を生々しく伝える。ひとりひとりの複雑な思いにフォーカスし、それぞれのドラマを紡ぐのが妙味。“平和”に賛同しない者がいるのも、また現実だ。
戦争に加え、悪意を克服できないSNS時代の善意の弱体化。そんな現代のリアルの中で、クライマックスに響く音楽の意味は大きい。希望は捨てない――作り手のそんな意志を感じさせる力作。
ここでいう“ノイズ”とは、人の悪意のことだろう。善意に覆われていた(かに見える)島で、シリアルキラーがもたらしたそれは図らずも伝染する。
良かれと思ってしたことが、他人の悪しき考えに侵食されていくスリル。そういう意味では面白いサイコサスペンスで、のどかな田舎町の風景と対をなすドス黒い人の心に言及し、とことんゾッとさせてくれる。
ツボを心得たキャスティングも俳優陣の演技も見どころで、藤原竜也の翻弄される者の妙演に引き寄せられ、長尺を気にすることなく一気に見てしまった。底意地の悪さを忍ばせる(?)廣木監督流のエンタメ演出にニヤリ。
バーチャルとリアル、デジタルとアナログ、理想と現実、善と悪など、正反対のものが複雑に絡み合う、そんな現代をリアルにとらえた本作。
サスペンスとして面白いのは、PCに弱い捜査官とオンライン上で生きる悪党の攻防だ。前者は足で動き、後者は知恵で立ち回る。それが詰将棋のように展開され、やがて王手へと至るのだが、その過程が実にスリリング。
人は善でありたいと思う一方で、退屈なルールに反発し、悪であることを自由と考える。そんな二面性を自覚したとき、何を行動の基準とするべきか?監督が得意とするドキュメンタリー的な手法が生き、ラストではそれを考えさせずにおかない。力作。
まず興味を引くのは、航空事故調査の最前線で働く人々の仕事ぶり。旅客機墜落の真相が、どのようなプロセスを経て追及されるのか? 実際に調査局に取材してリアリティを追求した成果が見て取れる。
そして主人公の音声分析という仕事にフォーカスしたつくり。ボイスレーコーダーに残されたわずかな音も聞き逃さず、疑問を追求する主人公。その姿にふれると観客の側も“音”に集中せざるをえない。聴覚からもスリルを味わえる……というわけだ。
人付き合いの悪い主人公は、ざっくり言えばオタク。能力があっても社会性がなければ信用されない、そんなキャラの脆さも活かされ、長尺ながら引き締まったサスペンスが成立する。力作!