ノイズ (2022):映画短評
ノイズ (2022)ライター4人の平均評価: 3.8
見る者のモラルも問われる良質なサスペンス
過疎化で衰退する日本の離島。故郷の復興を賭けた果物の栽培に成功し、島民の希望を一身に背負った農家の青年が、よそ者の元受刑者を誤って殺したことから窮地に陥る。このままでは名産品が売れなくなる!国からの交付金も貰えなくなる!島の人たちに申し訳ない!冷静に考えれば他に解決法はあったはずだが、しかし慌てた青年は仲間と一緒に殺人の隠蔽を図り、どんどんと泥沼にハマっていく。まさに貧すれば鈍する。迷走する現代日本社会を投影したような話だ。島の未来を守るため結束する主人公たちだが、しかし真相究明する警察から見れば排他的な日本の村社会そのもの。どちらに感情移入するかで見る者のモラルも問われる。
人間なんかそれ程キレイじゃないから!……な恐怖奇譚
ここでいう“ノイズ”とは、人の悪意のことだろう。善意に覆われていた(かに見える)島で、シリアルキラーがもたらしたそれは図らずも伝染する。
良かれと思ってしたことが、他人の悪しき考えに侵食されていくスリル。そういう意味では面白いサイコサスペンスで、のどかな田舎町の風景と対をなすドス黒い人の心に言及し、とことんゾッとさせてくれる。
ツボを心得たキャスティングも俳優陣の演技も見どころで、藤原竜也の翻弄される者の妙演に引き寄せられ、長尺を気にすることなく一気に見てしまった。底意地の悪さを忍ばせる(?)廣木監督流のエンタメ演出にニヤリ。
『デスノ』コンビを追い詰める負の連鎖
島の復興のために、ノイズ(邪魔者)を排除しようとした序盤の展開こそ“男性版「OUT」”にもみえるサスペンスだが、そこから起こる負の連鎖が、今度は幼友達の設定な藤原竜也と松山ケンイチを追い詰めていく。そこに神木隆之介が絡む新鮮さや、余貴美子が原作で男性だった自治体トップを演じたことは正解だが、村社会特有の不気味さが希薄なうえ、コーエン兄弟のようなブラックな悲喜劇にもならずといった中途半端さが目立つ。松ケンが同じく影を持ったキャラを演じた『BLUE ブルー』を踏まえるとニヤリな展開もあるなか、原作と異なるクライマックスなど、さまざまなオトナの事情が絡んだスター映画としては、これが限界にも感じる。
あなたならどうする?
藤原竜也×松山ケンイチという『デスノート』コンビの久しぶりの本格共演作品。
さらに神木隆之介、黒木華、永瀬正敏等々、本当に隅々まで実力派のキャストでぎゅっと詰まったサスペンス。まぁ、これだけでも一見の価値があるのですが…。
物語のメインキャラクターの行動や選択は、正直、受け入れられるものではありません。しかし、その一方で、自分がそのポジションの人間になったらどうするのか?という答えの出ない問いを突き付けられている気分にもなります。物語上の真相は一応明らかにはなりますが、映画の根本の部分の答えは見た人が自分で探すことになります。