略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
台湾ホラーの勢いをうかがわせるオカルトもの。日本にも“初七日”の法要があるが、台湾にも同じ名の風習があり、それが物語を機能させる。
祖父の葬儀のために10年ぶりに帰省したシングルマザーとその娘に降りかかる霊的な災難。その裏で何が起きていたのかを解き明かすドラマは意外性に満ち、驚きの事実へと導く。恐怖を醸すだけでなく、家族の情に訴えるエモい展開が味。
怨恨を抱くキャラの背景の描写が薄く、そのため後に引く恐怖に欠けるのは残念だが、心霊写真の見せ方をはじめとするショック描写は巧い。これが初長編監督作となる新鋭シェン・ダングイは今後もチェックしておきたい。
ナチュラルな人間ドラマとして完結した『百円の恋』が好き過ぎることもあり、超えるのは難しいだろうとは思っていたが、想像以上に健闘している中国版リメイク。
中国の国民的なコメディエンヌ、ジャー・リンが監督と主演を務めており、そのタレント性を生かした作品に変貌。お笑いの要素は多いが、本作の撮影をとおして50キロの体重減量に挑むという彼女のエンタテイナーとしてのマジ要素には仰天した。
TV出演のエピソードや『ロッキー』のパロディは、オリジナルを知る人間には演出過剰に映るだろう。それでも、たとえ結末がわかっていても、熱血の要素には素直に泣けてしまう。
ある人物の特定の時期にスポットを当てて、その人物の生を浮き彫りにするのは伝記ドラマの醍醐味。本作には確実に、そんな面白さが宿っている。
E・フェラーリの1957年、御年59歳時の4か月に焦点を絞り、栄光の光と影……というより、主に影の部分を描出。妻や愛人との二重生活、レースへの熱中、非情にも映る采配。それらをとおして彼が失ったものや失えなかったものが明らかになり、グッとくる。
M・マンらしいいつもながらの硬派演出は快調。驚いたのは40歳のA・ドライバーがフェラーリを演じていること。特殊メイクの効果があるにしても、このなりきりは凄い。
『クワイエット・プレイス』前2作では文明滅亡後の世界が描かれたが、この前日談では滅亡の始まりの時期を題材にしている。
大都会NYが侵略者によって、どう滅んでいったのかを背景にしつつ、緊急事態を生きる人間のドラマを紡ぐ。死期の迫るホスピス暮らしの主人公は人生に絶望していたが、カタストロフに直面したことで生の意味を考える。そんな彼女の心の変化がドラマ面での見どころ。
前2作もドラマありきのスリラーだったが、そういう意味ではシリーズのスピリットを正確に踏襲している。音の演出の妙はもちろん健在。アップの場面の多いL・ニョンゴの熱演にも目を見張った。
シリーズのファンにとって面白いのは、マイク&マーカスの主人公コンビの関係性の変化だろう。従来なら守りに入る家庭人マーカスを攻めのマイクが引っ張っていくところだが、今回は意表を突く設定でそれを逆にしている。
遊び人のマイクが結婚するという冒頭に驚き、マーカスが臨死体験から根拠のない自信を得るという展開で、このシリーズがコメディ色強めであったことを思い出す。アクションはもちろん快調だ。
マイク役のW・スミスにとってビンタ事件以来、久々の主演作。そんな彼にマーカスがビンタを食らわす場面には吹いたがが、それは同時に盟友の“バッドボーイ”に対する激励の表われのようでもある。さりげなく、アツい。