相馬 学

相馬 学

略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。

近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。

相馬 学 さんの映画短評

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  • うってつけの日
    何気ない日常の中で、何かが確実に変わる
    ★★★★

     別れた男女の再会の数日間を描いた本作。ドラマチックなことは何も起こらない。それでも確かに沁みてくるものがある。

     感情があらわになる瞬間は皆無。“なんか~”“そっか”“ありがとう”などの、ごく普通の会話が積み重なるリアル。ヒロインがつくり出す音楽の反復ビートにも似た何気ない日常の積み重ね。スケッチを連ねたような俊英、岩崎敢志の演出が滋味深さを醸し出す。

     ヒロインの表情のかすかな変化や、キーアイテムとなる“車”の意味を読み取ると、本作はより味わい深いものになるはず。静かな語り口ゆえに、胸を揺さぶられる好編。

  • テリファー 聖夜の悪夢
    殺人ピエロvs少女戦士、戦慄の第2ラウンド
    ★★★★

     新世代スラッシャー映画の旗手D・レオーネが、スプラッター描写に磨きをかけて放つシリーズ最新作。前2作はハロウィンを背景にしていたが、クリスマスに舞台を設定したことで色彩的に派手さを増した感がある。

     誰が殺されるかわからない展開に加え、バリエーションに富んだ惨殺描写も味。とりわけ監督がもっとも力を入れたというシャワー室でのチェーンソーの凶行には、やり過ぎゆえのブラックユーモアも漂う。これは語り草となるか。

     1作目で提示された殺人ピエロの不死身キャラ、2作目でのヒロインの役回りが、この3作目ではよりオカルト体制が明快となり、シリーズへの興味やドラマ的な面白さが増した。次が楽しみになる。

  • バーン・クルア 凶愛の家
    呪われたのは家か、人か!? チョイ辛口のタイ製ホラー
    ★★★★

     タイのホラーの濃厚さには目を見張るものがあるが、本作も然り。この分野で活躍するサクダピシット監督が強烈な人間ドラマとともに恐怖を紡ぐ。

     事件の始まりはヒロインの目線で語られ、次にその夫、老女の視点で最初の物語を検証する三部構成。視点が重なるほど、そこで何が起きたのかが明らかになる。この構成はホラーでは新鮮だ。

     オカルト設定を生かしつつ、それが実際に人間に起きたとき、どうするのか?……の検証も面白い。主演女優ジラヤンユンは、母性の激しい体現も相まって強い印象を残す。安堵と悲哀がブレンドしたかのような着地も◎。

  • ドリーム・シナリオ
    不条理、あまりに不条理!
    ★★★★

     ここ数年アート系作品でイイ仕事をしているN・ケイジが、好調もそのままに取り組んだ意欲作。内容はシュールだが、アリ・アスター製作のA24作品と聞けば、なんとなく腑に落ちる。

     主人公はただ多くの人の夢に現われてしまっただけで、他に何もしていない。にもかかわらずセレブとして持ち上げられ、害悪として突き落とされる。現実にはありえない、しかしSNSの世ならあるかもしれない、なんともイヤな空気感が味。

     主演のケイジは狼狽や焦燥をユーモラスに体現しつつ、恐ろしく不条理な状況に溶け込んだ。これがハリウッドデビューとなったノルウェー出身、K・ボルグリ監督の日常感覚にあふれた描写の妙も光る。

  • 六人の嘘つきな大学生
    スリリングに描かれた、就活という名の残酷
    ★★★★

     “嘘つき”というレッテルを貼られた人間に対する、好ましくない印象を逆手に取った巧さ。原作のそんな要素を生かしながら、サスペンスフルな群像劇を展開させる。

     就職試験のゲーム的な要素、そのゲームがもたらす6人の結束の破綻、あぶり出される六六者六様の過去。それらを絡めつつミスリードをまぶした展開の妙。大企業のえげつなさや就活の残酷性を匂わせつつ、青春ドラマに着地させた点が面白い。

     原作小説の文章表現の妙を映画で再現するのは困難と思われたが、カットのつなぎのスピード感や音楽の配置の巧妙さを生かすなどの工夫は買い。俳優6人の演技が織り成す舞台劇のような緊迫も味。

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