六人の嘘つきな大学生 (2024):映画短評
六人の嘘つきな大学生 (2024)ライター3人の平均評価: 4
『キサラギ』監督による“就活あるある”な密室推理劇
「ある目的を持った登場人物たちが、ひとつの部屋に集う」密室推理劇を、『キサラギ』の佐藤祐市監督が撮るだけで、ある程度のクオリティは予測できるだろう。さらに、そこに身近な“就活あるある”が加わるわけだが、「犯人=裏切者」の存在や彼らの裏の顔など、『何者』との共通項も多く、次世代感溢れるキャスティングにも注目。個人的にはキラキラ映画の金字塔『思い、思われ、ふり、ふられ』の浜辺美波と赤楚衛二の駆け引きがたまらないが、やはり芝居の巧さとしては倉悠貴のダントツ。結末への繋げ方が原作と異なるものの、映画の脚色としては許容範囲であり、尻つぼみに終わった『何者』より満足度高し。
スリリングに描かれた、就活という名の残酷
“嘘つき”というレッテルを貼られた人間に対する、好ましくない印象を逆手に取った巧さ。原作のそんな要素を生かしながら、サスペンスフルな群像劇を展開させる。
就職試験のゲーム的な要素、そのゲームがもたらす6人の結束の破綻、あぶり出される六六者六様の過去。それらを絡めつつミスリードをまぶした展開の妙。大企業のえげつなさや就活の残酷性を匂わせつつ、青春ドラマに着地させた点が面白い。
原作小説の文章表現の妙を映画で再現するのは困難と思われたが、カットのつなぎのスピード感や音楽の配置の巧妙さを生かすなどの工夫は買い。俳優6人の演技が織り成す舞台劇のような緊迫も味。
噓の先に何がったか?
六人の若手演技派が集まったほぼワンシチュエーションの舞台劇にも似た作品。会話劇なので6人の技量が試されますが、6人が6人とも大健闘し、映画を最後まで引っ張ってくれます。大きな山場を乗り越えた後のいわゆる解決編がまた一ひねりあって面白かったですね。2時間弱の上映時間ということもあって一気に駆け抜ける爽快感があります。娯楽密室型サスペンスとしては十分楽しめる映画と言えるでしょう。このメンバーで舞台版があっても良いかもしれませんね。