轟 夕起夫

轟 夕起夫

略歴: 文筆稼業。1963年東京都生まれ。「キネマ旬報」「月刊スカパー!」「DVD&動画配信でーた」「シネマスクエア」などで執筆中。近著(編著・執筆協力)に、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督』(ぱる出版)など。

近況: またもやボチボチと。よろしくお願いいたします。

サイト: https://todorokiyukio.net

轟 夕起夫 さんの映画短評

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  • 異人たち
    無数の「孤独なストレンジャーたち」の輝きが見えてくる
    ★★★★★

    「The Power of Love」もいいが「Always on my mind」の歌詞がこんなにも沁みるとは! 映画の余韻が凄い。我々は孤独な“星”で、その瞬きは時に重なり合うことだろう。本作の主人公とパートナー、二人の星――の周囲に無数の「孤独なストレンジャーたち」の輝きが見えてきて、グッと来る。

    その直前のベッドでの抱擁は、写真家アニー・リーボヴィッツが撮ったジョン・レノンとオノ・ヨーコを連想した。そう、全裸のジョンが胎児の如く背中を丸め、黒いセーターとジーンズをまとったヨーコにキスをする。それとは向きが逆だが、“最後の一日”を永久に留めたあの一枚のように二人の抱擁は永遠化するのだ。

  • オッペンハイマー
    「Confusion will be my epitaph」
    ★★★★★

    その男の表情はほとんど、苦渋に満ちている。「トリニティ実験」後になると、より顕著に。冒頭に掲げられるのはギリシャ神話の男神、天界の火を盗んで人間に与え、罰せられたプロメテウスの逸話で、同列とされたオッペンハイマーもまた罪深き「原爆の父」と呼ばれ続けるのだ。

    序盤に、彼に霊感を与えたピカソの「座る女(マリー・テレーズ)」が象徴的に映されるが、この作品自体がノーラン監督の“映画のキュビスム志向”の変奏。「オッペンハイマーとアインシュタイン博士の秘密の会話」がファーストシーンとラストでくっきり対になっており、ノーラン監督がフェイバリット作『アラビアのロレンス』の円環構造を意識したのは明白である。

  • 青春ジャック 止められるか、俺たちを2
    ノスタルジーではない、何者かになりたい人のための映画
    ★★★★★

    この自伝的な映画で80年代の青春の日々を赤裸々に綴り、監督・脚本を手がけた井上淳一のことも、メイン舞台となる名古屋の老舗ミニシアター、シネマスコーレのことも、それから木全支配人やキーマンである故・若松孝二のことも全く知らなくていい。とにかく「何か面白いことはないかな?」と感じている人ならば、「映画が諸手で歓迎!」してくれると思う。

    言うなれば、現在と同じような境遇の“無共闘世代”の話だ。自意識だけは高く、何者でもない若造が、憧れの世界へと飛び込んだら、かつて通った予備校のPRムービーを初監督しなければならなくなり……というハチャメチャな奮闘劇なのだ。“実録”映画の美点がギュッと詰まっている。

  • 続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
    『夕陽のギャングたち』も4K復元版でリバイバルしないかなあ~
    ★★★★★

    ただ今、監督レオーネ、主演イーストウッド、音楽モリコーネの世界遺産的な《ドル3部作》が4K復元版となって一挙公開中だが、なかでも『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』は、上質なコメディにしてオペラの風格をも湛えた傑作ウエスタン。原題の“いい奴、悪い奴、汚え奴”キャラが大金目指して互いに裏をかきあい、三すくみ状態となってバトルを展開する。

    南北戦争下、両軍が奪い合う橋を爆破しにいくエピソードで、瀕死の大尉に酒瓶を渡し、「これを飲んで、耳を済ましてな」とイーストウッドが声をかけるシーンは出色過ぎ。無論そのあとに待っているシークエンス、名曲「黄金のエクスタシー」が流れての、サッドヒルでの最終対決も!

  • ゴールド・ボーイ
    星乃あんな、というか、演ずるヒロインの“心情”に胸がつまる
    ★★★★

    最初の“違和感”が本作の罠の始まり。発端は、実業家の婿養子である青年(岡田将生。抜群にいい!)が実行した殺人計画だ。それを偶然、ティーンの三人組が動画に収め、一番臆病そうな少年(羽村仁成)が、脅して大金をせしめることを思いつく。なぜそんな気が起き、大胆な行動に出たのか……見事に上書きされてゆくのが快感!

    サイコな殺人犯に、(各々問題を抱えた)ピカレスクな子供たち。舞台が沖縄で、プロデューサーの吉田多喜男、撮影の柳島克己ほか、元「北野組」の主軸が名を連ね、豪腕・金子修介監督と組んで『3−4X10月』とは角度の違う“逆転劇”、『ソナチネ』とは別の忘れ難い“夏休み映画”を作ったことに快哉を叫んだ。

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