青春ジャック 止められるか、俺たちを2 (2023):映画短評
青春ジャック 止められるか、俺たちを2 (2023)ライター2人の平均評価: 5
ノスタルジーではない、何者かになりたい人のための映画
この自伝的な映画で80年代の青春の日々を赤裸々に綴り、監督・脚本を手がけた井上淳一のことも、メイン舞台となる名古屋の老舗ミニシアター、シネマスコーレのことも、それから木全支配人やキーマンである故・若松孝二のことも全く知らなくていい。とにかく「何か面白いことはないかな?」と感じている人ならば、「映画が諸手で歓迎!」してくれると思う。
言うなれば、現在と同じような境遇の“無共闘世代”の話だ。自意識だけは高く、何者でもない若造が、憧れの世界へと飛び込んだら、かつて通った予備校のPRムービーを初監督しなければならなくなり……というハチャメチャな奮闘劇なのだ。“実録”映画の美点がギュッと詰まっている。
びっくりするくらい面白い!
若松プロ疾走記『止め俺』の続編は名古屋シネマスコーレ物語……の本体から、二段式ロケットのように井上淳一監督の青春記=オートフィクションが前面化する! イキった映画小僧の80年代はビデオの普及、ピンク映画の新潮流、ミニシアターや予備校ブームの波など、『全裸監督』『素敵なダイナマイトスキャンダル』『不適切にもほどがある!』等と接続できる日本特有の文化史と共に動く。
しょっぱい記憶を含めて肝は祝祭感。「人は誰でも一生に一度は傑作を書ける」というかつて『祭りの準備』でも引用された新藤兼人のテーゼが見事に血肉化。そして“若松孝二の魂が降臨している井浦新”が絶品過ぎて、観ているだけで幸福な気持ちになる!