轟 夕起夫

轟 夕起夫

略歴: 文筆稼業。1963年東京都生まれ。「キネマ旬報」「月刊スカパー!」「DVD&動画配信でーた」「シネマスクエア」などで執筆中。近著(編著・執筆協力)に、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督』(ぱる出版)など。

近況: またもやボチボチと。よろしくお願いいたします。

サイト: https://todorokiyukio.net

轟 夕起夫 さんの映画短評

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  • ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE
    イーサンvs A.I.<人工知能>──世界史をぬりかえるのは
    ★★★★★

    何度も武器としてフェイクを仕掛けてきたスパイという存在が“現代のフェイク沼”を生成させるA.I.空間であがく諧謔的な面白さ。イーサン・ハントが闘っているのは敵側の相手だけでなく、空虚な時代そのものに見える。

    世代的にはTVアニメ『ルパン三世1st』の 第22話「先手必勝コンピューター作戦!」(72)や劇場版『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(78)のまさかの実写化に触れた思い。A.I.の汎用性に対し、あくまで己の精神と肉体に賭けてみせるイーサン/トム・クルーズのロマンチシズムに酔いしれた。(マクガフィンに振り切る、やや粗い脚本だけども)弓を最大限までしならせて、PART?へと繋ぐ姿勢も良き。

  • 658km、陽子の旅
    熊切和嘉監督と“再会”を果たした日本映画初主演・菊地凛子の旅
    ★★★★

    タイトルロールの、半ば人生から降りかかった“陽子”に血肉を与え、658kmの旅を生きてみせた菊地凛子。その道中では、現在の日本、そして東北地方の偽らざる具象、むきだしの風景と、陽子の心象とがクロスしてゆく。

    ところで随分と前、菊地凛子に取材したときのことだ。彼女はマイケル・チミノのロードムービー『心の指紋』(96)が大好きだと言っていた。『空の穴』(01)以来、熊切和嘉監督と“再会”を果たしたこの(ヒッチハイク)ロードムービーは、題材やスタイルが違っていても、自己や過去と対峙する主人公と、醸造されていくホットな空気感がどこか似ていた。きっと、彼女にとっての“心の指紋”が誕生したのだと思う。

  • 走れ!走れ走れメロス
    「はじめてのおつかい」級の展開。東京での劇場公開はあと2日。
    ★★★★

    演劇部顧問である担任に誘われ、初めて舞台に挑んだ島根県の高校生男子4人をカメラは追う。演目は独自のアレンジを施された太宰治の『走れメロス』。始まりはNHKの折り目正しい番組っぽい作りだが、2021~22年、コロナ禍の「不要不急」の空気に抗った若人たちの胸熱なドキュメントへと加速してゆく。

    無観客の地区大会。全国出場を得る本校と、彼ら分校との明暗……からの、まさかの演劇の街・下北沢へ。その果てには「はじめてのおつかい」級の予想外の展開が待っている。出演者のひとり、曽田昇吾くんは今後、本格的に役者を目指すという(4月から文学座の研究生に!)。折口慎一郎監督は続編を製作中、“ドラマ”は終わらない。

  • 劇場版 センキョナンデス
    酔狂さに自覚的な野次馬にして、「政/祭りごと」を好む暴れ馬
    ★★★★

    “野次馬コンビ”を自称する、ラッパーと時事芸人による衆参選挙戦の漫遊記。ドキュメンタリーだが感触としてはさながら、傑作映画『コミック雑誌なんかいらない!』(86/監:滝田洋二郎)のよう。すなわち突撃レポーター、内田裕也サン演ずるあのキナメリのごとく体を張り、内容的にも同じくヴィヴィッドに時代を切り取りつつ、コメディからホラーまで多ジャンルを横断してゆくのだ。

    しかも二人の肝の据わり方は、明治大正時代、ジャーナリストとして活躍した反骨のパロディスト・宮武外骨や、その影響下で生まれた、前衛美術家・赤瀬川原平の漫画キャラ=馬オジサンと泰平小僧にも匹敵する。つまりパンクで、元気の出る映画ナンデス!

  • 別れる決心
    「謎恋愛」を巡る永久の「未解決事件」であり「完全犯罪」の成就
    ★★★★★

    なぜか我々は普段、「恋」と「愛」を組み合わせた「恋愛」という言葉を無条件で受け入れ使っているが、監督パク・チャヌクのこの新作を観てしまうとちょい足しし、「謎恋愛」なんて造語をひねり出したくなる。

    人は他者の言葉、行動に対して理解と誤解を繰り返す。だから劇中では“推量”と“翻訳”が大きくフィーチャーされる。人の心、それも本心を推し量り、完全に翻訳することの難しさ。

    そこに触れてゆく本作は、刑事と容疑者という特殊な関係性から始まるが、二人に待っているものとはミステリーラブを巡る、永久の「未解決事件」であり、そして我ら観客をも巻き込んだ極めて映画的(フィクショナル)な「完全犯罪」の成就だ。

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