シングルマン (2009):映画短評
シングルマン (2009)人生のどん底にいても、生きていれば希望はある
トム・フォードの映画とあり、ビジュアルのセンスが抜群なのは想定内。予想外だったのは、彼が共同執筆した脚本が、それ以上に美しいことだ。16年を共にした恋人を事故で失った大学教授が、自殺を実行する日に選んだ1日を追う今作では、会話や、彼が授業で語ることなどのひとつひとつが、深く、心に突き刺さる。とてつもなく悲しい物語でありながら、生きていればまた素敵なことが起こるかもしれないのだという希望を与えてくれるのが今作。さらに、愛のパワー、他人を思いやることの大切さも語る。まさに、今、見る価値のある映画。それを自分の気持ちとしてまっすぐに伝えたフォードには、映画監督としての果てしない潜在性を感じる。
この短評にはネタバレを含んでいます