恋するリベラーチェ (2013):映画短評
恋するリベラーチェ (2013)![恋するリベラーチェ](https://img.cinematoday.jp/a/T0011340/_size_640x/_v_1381908671/main.jpg)
傲慢でわがままで人一倍傷つきやすい乙女なオッサン
リベラーチェといえば、自分が洋楽を本格的に聴き始めた80年代においては、それこそ究極にダサくてカッコ悪いものの代名詞だった。ケバケバしい衣装は古臭い成金趣味丸出しだし、クラシックともポップスともつかない中庸な音楽は全然クールじゃないし。いわばオバサマたちのアイドル。インパクトだけは妙に強烈だった。
そんな異形のエンターテイナー、リベラーチェの知られざる素顔を、彼の恋人だった年下男性スコットの視点から描いた本作。そう、本人は死ぬまで絶対に認めようとはしなかったが、彼もまたクローゼット・ゲイの一人だったのである。とはいえ、ここにはそんな秘密を抱えた男の孤独や苦悩など微塵もない。虚飾まみれの芸能界に骨の髄まで浸かったスターは、傲慢でわがままで独占欲が強く、それでいて人一倍傷つきやすい乙女なオッサン。その天衣無縫な生き様が可笑しくもあり哀しくもあり、どこか人間的な親しみすら感じる。
ソダーバーグ監督の軽妙かつユーモラスな演出も見事だが、歩くカミングアウトなリベラーチェを生き生きと演じるマイケル・ダグラスの怪演がまた圧巻。「雨に唄えば」の大女優デビー・レイノルズの健在ぶりも嬉しい。