人生はビギナーズ (2010):映画短評
人生はビギナーズ (2010)いざとなれば「初心者」として人生いつでも生きなおせます。
マイク・ミルズの実体験だという父親のエピソードの“引き”があまりに強いのでジェンダーをめぐる映画かと思いきや、そう断ずるのはちと早い。実はもうひとつ軸となる物語があるのだ。カミングアウトから5年後、父はあの世へ旅立つ。喪失感とともに訪れる新しい恋。時制の異なる三つのできごと(少年期の記憶、父の末期、現在の自分)が頻繁に交錯するが、そこから浮かび出るのは’50年代アメリカの裏の顔。父はゲイであることを、母はユダヤの血を引くことを隠さずには暮らせなかった時代のポートレイトだ。父母が強いられた苦悩に比べ、僕たちの世代の煩悶はなんと脆弱なことか!それが恋をためらう主人公をぐいぐいと後押しするのだ。
この短評にはネタバレを含んでいます