MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間 (2015):映画短評
MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間 (2015)ライター2人の平均評価: 4
ジャズの帝王がネタの“薄い本”
“マイルス版『ブルーに生まれついて』”を期待すると、桂文枝ばりに座席から転げ落ちる珍作だが、一概にそうと言い切れないエネルギーが感じられる『実録ブルース・リーの死』みたいな本作。イメージ的には「YAH YAH YAH」をバックに、「2020年東京オリンピックのテーマ曲」をめぐり、ASKAがヤクザとドンパチしたり、逃げ回ったりしながら、やっぱり一発キメちゃう“あくまでも”妄想話。要はマイルスが好きすぎてたまらないドン・チードルが、我慢できずに描いた“薄い本”を自ら監督&主演。だからか、なりきりマイルスとユアン・マクレガー演じる白人記者のやりとりも、観方次第では乳繰り合ってるようにしかみえません。
ほとんど二次創作のパロディックなエンタメ!
当然のように「秘話」系を想像(期待)していたら、全然違った(笑)。でもこれはこれで面白い。ドン・チードルが本気の物真似でなりきってる、言わば「そっくりさん」が白人記者(!)を相棒にN.Y.の街でバディ物の活劇を繰り広げる。まさに“70年代風”のB級アクション。マイルスマニアの売人男子とのやり取りとか、むしろ創作(妄想)度の高そうな場面がワクワクする。
さじ加減を間違うと完全なバチ当たり企画だが、帝王マイルスを神棚に置かない姿勢が新鮮。むろん愛と研究は充分だと思うが、ロバート・グラスパーの音楽も含めて脱構築/再解釈志向が強く、謙虚さより大胆さが魅力だろう。本物出演作『ディンゴ』との二本立希望!