スパイ・レジェンド (2014):映画短評
スパイ・レジェンド (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
スパイ映画ファンへの目配せが妙味
ピアース・ブロスナンが『007』シリーズ以来、久々にスパイ役に復活したというだけで嬉しくなる。しかも『007』の大味さ(もちろん良い意味で)とは異なるノリなのだから面白い。
ピアースふんする元CIAエージェントは粋なジェームズ・ボンドと違い、頑固かつ冷徹なプロフェッショナルで、入り組んだ陰謀の中で奔走を繰り広げる。この硬派な姿勢こそ最大の魅力。
主人公の四面楚歌状態は確かに面白いが、一方でオチを知ってしまうと単純に済む話を無理に難しくしている気がしないでもない。が、ボンド・ガール歴のあるオルガ・キュリレンコとの共演も緊迫感にあふれ、スパイ映画ファンには見逃せない作品と言えるだろう。
P・ブロスナンの新たな当たり役誕生!
チェチェン紛争に絡む米露のパワーゲームを背景としつつ、己の良心に従ったことで米露双方を敵に回した元CIA工作員の死闘を描く。
まずはピアース・ブロスナンの完全復活を祝したい。国家の大義名分のもと大勢の命を犠牲にしてきた元スパイが、まるでその罪を贖うかのごとく弱者のために奔走する。007とは一味違った悲哀とニヒリズムを漂わすブロスナンが実にカッコいい。
リトビネンコ事件に着想を得たであろう題材(原作設定を大幅変更)は新鮮味なし。だが、組織の論理VS個人の正義に迫るドラマ展開は手応え十分。古典的なスパイ映画の醍醐味を継承したR・ドナルドソン監督の流麗な演出も冴える。シリーズ化決定は大歓迎だ。