メイジーの瞳 (2013):映画短評
メイジーの瞳 (2013)ライター3人の平均評価: 4.3
離婚にふり回される子供…モデルはあのセレブキッズ!?
離婚劇を子供目線で描き、大人がどれだけ身勝手で、子供が振り回されているかをまざまざと見せつける。原作はヘンリー・ジェイムズが1989年に出版した小説だがN.Y.のセレブに置き換えられ、共同親権を主張した親のために定期的に父と母の家を行き来する様子は、現代の家族の肖像だろう。
しかし本作が単なる悲劇で終わらずむしろ爽快感すら感じるのは、この少女が、生まれ持った女子の本能を無意識に発揮しながら苦難を乗り越えていく視点を加えたところにある。イケメンの新しいパパにすぐになつく現金さ。人生はままならずとも、日々のファッションに抜かりはない。トム・クルーズの愛娘スリちゃんの姿を重ねて見てしまいそうだ。
幼い少女の視点から、ややこしい大人の世界を見つめる
身勝手な両親に振り回される6歳の少女メイジーが、やがて血の繋がらない男女と家族の絆を深めていく。なぜなら、彼女への思いやりと慈しみを言葉だけでなく実際の行動で示したのが、皮肉にも実の親ではなく彼らだったのだ。
本作はそんな幼い子供の視点から、大人の世界のややこしさを見つめていく。だが、かといって大人の傲慢や偽善を一方的に断罪するわけでもない。
複雑に思える状況や問題も目線を変えてみれば、既成概念に囚われず解決の糸口が見つかるのではないか、一番に優先すべき事柄に気付くのではないかと、見る者にそっと問いかけるのだ。演技を演技と感じさせないメイジー役オナタ・アプリールの自然体も大きな魅力。
人生で最も大切なものを、子供は理屈ではなく知っている
離婚した両親の身勝手さに翻弄される6歳のメイジーが、結局は他人との間に絆を見出していく現実は悲しくもある。が、家族のあり方や愛の形にルールは無用であることを強く実感させるものでもある。
メイジーが心を通わせる母親の再婚相手役、アレクサンダー・スカルスガルドの透明感のある優しいまなざしと、メイジー役オナタアプリールの澄んだ瞳の親和性が素晴らしい! それゆえ、2人の絆が切なく胸にしみるし説得力もある。
人生で最も大切なものを、最初から理解していたのはメイジーだけだったのではないか。純粋に愛を求める彼女の姿は、いつのまにかややこしくなってしまった人生を今一度シンプルなもにしてくれるかもしれない。