オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~ (2013):映画短評
オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~ (2013)ライター2人の平均評価: 4
人はなぜ生きるのか?というテーマを突きつける
自家用ヨットを一人で操縦していたところ、インド洋のど真ん中で運悪く遭難してしまった老人。平穏だった航海に予期せぬ災難が降りかかり、美しい大海原が突如として牙をむく。それはまさに人生の縮図であり、“人はなぜ生きるのか?”という根源的なテーマを我々の前に突きつける。
冒頭の短いモノローグ以外はほぼセリフなし。主人公の名前も“我らの男”とだけ表記され、いったい彼がどういう人物なのか、なぜ単独で海へ出たのかなどの説明もない。ただひたすら、大自然の脅威に立ち向かう老人の壮絶なサバイバルを描く。その臨場感と圧迫感たるや「ゼロ・グラビティ」にも匹敵。御年77歳になるレッドフォードの大熱演も特筆に値する。
(老人と)海の『ゼロ・グラビティ』!?
マジでキャストひとりのみ! ロバート・レッドフォード(76歳)が“Our Man”とクレジットされた男を演じ、広大すぎるインド洋で孤独な遭難サバイバルに挑む。言葉にならない大声や慟哭のほかは一切台詞もなし。『ライフ・オブ・パイ』と『ゼロ・グラビティ』を合わせたような内容だが、映像は最新3Dではなく、20世紀型の実験映画みたいな作り。
だが自主映画的な閉塞に陥らないエンタメ度はさすが。欲を言えば『ゼログラ』と同じ90分サイズにまとめたらもっと密度が出たと思うが、ハリウッドとインディペンデントをつなぎ、環境運動家でもあるレッドフォードの思想性がよく体現された異色の一本として記憶に留めたい秀作だ。