ザ・コール [緊急通報指令室] (2013):映画短評
ザ・コール [緊急通報指令室] (2013)ライター2人の平均評価: 4
綱渡り的な緊張感で観客を釘付けにする
緊急通報のオペレーターが、携帯電話の通話一本だけで拉致された被害者を救出しようとする。ともすれば映画的なダイナミズムを損ないかねない設定に的を絞りつつ、綱渡り的なギリギリの緊張感を煽りまくることで観客をスクリーンに釘付けにしてしまうブラッド・アンダーソン監督の演出が頼もしい。
なにしろ、誘拐された少女は移動する車のトランクの中。携帯は使い捨て電話なためGPS機能が使えない。女性オペレーターは内側からテールランプを壊して他の走行車に合図を送るなど様々な指示を出すが、暗く狭い場所へ押し込められた上に恐怖で動揺した少女はなかなか器用には動けない。しかも、運転席の犯人に通話がバレたら一巻の終わりだ。その女性オペレーターが過去の似たような事件で誘導に失敗した過去があり、心にトラウマを抱えているという設定も上手いこと効いている。
ただ、少々引っかかるのは終盤。一介のオペレーターがそこまでやるか?という展開はそれまでの徹底したリアリズムに水を差すし、最後の決着にしても倫理的に賛否が分かれることだろう。
携帯電話サスペンス『セルラー』からの進化形!
面白い! 変態男に誘拐された女子(アビゲイル・ブレスリン)が、ケータイ一本でつながった911オペレーター(ハル・ベリー)の指示で絶体絶命の危機から脱しようとする。通話がバレたら終わりという、じりじりした緊張感。携帯電話を命綱にしたサスペンスなら『セルラー』やその香港版『コネクテッド』があり、さらに『96時間/リベンジ』でも見せ場に組み込まれていたが(思えばすべて佳作だ)、本作は『激突!』的なシンプルさに特化したのが勝因。最近はTVの仕事も含め職人感が増しているブラッド・アンダーソン監督の腕もいい調子!
このワン・シチュエイションで押す3分の2までは文句なしの傑作……なのだが、残りの3分の1からオチにかけては「えっ、わざと?」くらいに賛否が分かれる展開に仕上げている。別に失速するのではなく、舵の切り方が意外というか。話のネタという意味で、むしろ必見度は上がっている?
ところで犯人がTacoの「踊るリッツの夜」やカルチャー・クラブの「カーマは気まぐれ」など、80年代前半のヒットソングを愛聴していることに注意。つまり彼の人生はこの時期で止まっている――これが本作のドラマ的なキモだろう。