25年目の弦楽四重奏 (2012):映画短評
25年目の弦楽四重奏 (2012)ウォーケンの微かな表情の変化にも目が釘付け
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番は、死の前年に書かれた曲で創作活動の頂点を極めた作品とされている。本作はこの第14番をどう解釈し、どう演奏するかということと、不協和音を奏でる人間関係にどう対処し、どう生きるのかということを同義として4人の心の葛藤を描いている。「休みなしの全楽章アタッカで演奏すべき」という作曲者の意図に沿えば、各人の音には少しづつズレが生じてくる。もがきながら強引に最後まで走り抜けるのか、一度止まって調整するべきなのか…? 俳優陣は等しく好演でアンサンブルも見事だが、今作はクリストファー・ウォーケンに尽きると思う。圧倒的な存在感とカリスマ性、そして人生そのものだった演奏家生活との別れを決意する苦悩と覚悟を、静かだが説得力をもって体現。ウォーケンの微かな表情の変化も見逃すまいと目が離せなかった。
この短評にはネタバレを含んでいます