僕が星になるまえに (2010):映画短評
僕が星になるまえに (2010)”死”の残酷さを直視した、作り手の真摯な姿勢に好感が持てる
末期ガンの29歳のジェームズが、最後の願いとして親友3人と旅に出る2010年のイギリス映画。
この種の題材は、必要以上に物語をドラマチックにするあざとさや死を美化して描くことに何よりも嫌悪感を覚える筆者だが、想像以上に現実を直視した作り手の真摯な姿勢には感動すら覚えた。心をもむしばむ身体の激痛に耐えながら、友人たちについ厳しい言葉を浴びせてしまうジェームズ。対して本音をさらけだす友人達との言葉の応酬は、どれも鋭く胸に刺さる。
命の限りを意識し実感することは、「どう生きるか」に直結する。本作はロードムービーの体裁を取りながら、死の残酷さをきっちりと描くことによって、今生きているこの瞬間がいかに貴重で奇跡的なことであるかを切実に伝えている。
ジェームズを好演するのはベネディクト・カンバーバッチ。精一杯のシニカルなユーモアを発揮しつつ、友に向けた強い言葉に自分自身が傷ついてしまうような哀し気な表情が忘れられない。ラストは賛否あるだろうが、絶対的な正解は存在しない問題なので個々の見解があって然るべきと思う。