大脱出 (2013):映画短評
大脱出 (2013)ライター3人の平均評価: 3
スタ×シュワが相乗効果で盛り上げるスター映画
シルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーの共演となれば盛り上がる! 彼らのファンならば、そんな期待が裏切られることはない。
前者が主演、後者がゲスト出演した『エクスペンダブル』は一応の彼らの初共演作だが、二枚看板として組み合うのは初。一時代を築いたアクション俳優がガチで組み合う以上、両者のバトルは誰もが求めるところ。本作では、まずその一対一のケンカ対決が大きな見どころとなる。
肉体的な試練に音を上げないスタローンの根性キャラも、ゴッツイ銃を手にした瞬間にスローモーションになるシュワの頼もしさも期待に応えるに十分。脚本のユルさを補って余りある重量級のスター映画だ。
スライ&シュワで「プリズン・ブレイク」
2大アクションスター、初の本格競演ということで、どれだけ老体にムチ打って暴れてくれるか、と期待するかもしれないが、あえて『エクスペンタブルズ』と同じ路線を選ばなかったところがいい。
意外にも導入部は(音楽も含め)“スタローン版『ミッション:インポッシブル』”。セキュリティー・コンサルタントの設定や、50セントらとチームプレイはちょっと斬新だ。本筋に入り、シュワと出会ってからは「プリズン・ブレイク」さながらの頭脳戦が展開。そんななか、2人の言いように使われる医師役のサム・ニールやら、「笑ってはいけない」シリーズのシバき手のように2人をいたぶる看守役のヴィニー・ジョーンズといったキャストが、ちょっとしたお得感をプラス。
そして、クライマックスでは、お待たせしました!とばかり、それぞれの見せ場というか、「…っぽい肉体アクション」を用意。確かに動きにキレはないが、ファン・サービス映画としては及第点な仕上がりといえる。
衰えた筋肉を頭脳でカバーする80年代“箱入りオヤジ”の大脱走
80年代に実現していれば事件だった。67歳のスタローンと66歳のシュワルツェネッガー、遅すぎた初の“本格”競演。往年の人気歌手が「年忘れにっぽんの歌」で勢揃いするかのような『エクスペンダブルズ』シリーズの自虐臭などなく、本気である。しかも、IQが低い活劇と揶揄されることへの返礼なのか、設定上スタローンは頭脳明晰な脱獄のプロだ。敵か味方かわからないシュワルツェネッガーと手を組み、難攻不落の監獄要塞に挑む。ありきたりだ。
とはいえ、若手や中堅のスターでは出せないオヤジ臭を放ち、老体に鞭打ちながら走って殴って銃をぶっ放す。もちろん、デ・ニーロとアル・パチーノが『ヒート』で競演したときのような観る者を高揚させる演技的ケミストリーは全く起こらない。2人の80年代アクションスターが、いや、2つの筋肉の塊が、予想通りの結末に向かっていく。
これは、「映画」そのものが後期高齢者へ向かいつつある時代の象徴かもしれない。ヒットするかどうか、それはレンタル店愛用オヤジ世代が、DVD化を待たず、転ばずに劇場へ向かって走るかどうかに掛かっている。